◎編集者コラム◎ 『醤油と洋食』神楽坂 淳
◎編集者コラム◎
『醤油と洋食』神楽坂 淳
「うちの旦那が甘ちゃんで」や「金四郎の妻ですが」などの文庫書き下ろしシリーズで人気絶好調、時代小説の旗手である神楽坂淳先生の最新作が本作『醤油と洋食』。
小学館文庫の既刊『うちの宿六が十手持ちですみません』と『大正野球娘。』では、江戸時代と大正時代を描いていただきましたが、今回は明治時代の麻布周辺が舞台となります。
その本作、気になるヒロインはといえば、麻布にある老舗料亭「鈴川」のひとり娘で、目白に立つ椿山女子大学へ通う鈴川八重という名の女学生。
ここで、ほんのちょっとでも、「ん?」と感じた神楽坂先生のファンは、ものすごく記憶力がよくて、鋭いセンスの持ち主と言って構わないと思います。
なぜならば、料亭の「鈴川」は、『大正野球娘。』のヒロイン・鈴川小梅が暮らすお店でもあるからです(正確には、小梅の時代には洋食屋「すず川」に店名が変わっていますけれども)。
そしてご明察の通り、鈴川八重と小梅は母娘の間柄。つまり、『大正野球娘。』と『醤油と洋食』は、世界観を同じくする姉妹作(母娘作?)なのでありました。
すでに『大正野球娘。』をご覧になった方は当然ご存じなわけですが、本作から手にした方は、八重と甘酸っぱい恋仲になる「鈴川」の若い板前・岩本洋一郎が、未来の『大正野球娘。』で、八重とどういう関係になっているかを想像しながらお読みになると、より一層楽しめるかもしれません。
加えて、恋に恋する明治時代に生きるヒロイン・鈴川八重を囃し立てる女子大の同級生――男爵家の男装令嬢・桜木虎姫と、資産家の美貌令嬢・桃澤雫の、スイーツ大好きグルメなふたりの食レポが、これまたいい味を出しているのです。
そんな明治時代の食べ歩き女学生三人娘が花に団子に大忙しする、明治グルメロマンスをぜひお楽しみくださいませ。
──『醤油と洋食』担当者より
『醤油と洋食』
神楽坂 淳