◎編集者コラム◎ 『超短編! ラブストーリー大どんでん返し』森 晶麿
◎編集者コラム◎
『超短編! ラブストーリー大どんでん返し』森 晶麿
「僕は死にましぇん!」ではないけれど、昨今は、いっそ派手なまでの恋愛表現というものをめっきり見かけなくなったように思います。そもそも恋愛しない若者も増えているというし、エンタメとしての恋愛ものは今どこに!? そんなエアポケットに生まれ落ちたのが本作、『超短編! ラブストーリー大どんでん返し』なのです。
現在9万部のロングセラーとなっている『超短編! 大どんでん返し』の姉妹編ということからもお分かりのとおり、1話わずか5ページの掌編は、全てにあっと驚く仕掛けが施されています。その上に、さらに恋愛モチーフを纏わせるという超絶技巧を施した作品31編を紡ぎ出したその人こそ、ミステリー作家・森晶麿さん。アガサ・クリスティー賞を受賞しデビュー、「偽恋愛小説家」という人気シリーズの著者……となれば、【超短編】×【ミステリー】×【恋愛】というコンセプトにおいて他に適任はないと言えましょう。
実際、送っていただいた原稿を読んで、驚きました。いえ、驚きつづける羽目になりました。高校生のフレッシュでキュンな恋愛模様はもちろん、ちょっと大人なビターな味わいのもの、人生晩年に得た奇跡の出会いや、歴史上の有名人が登場するもの、なんなら人間同士に限らない関係性まで描かれたと思いきや、ゾクっとするようなサスペンスもあり……と、まさに千変万化、百花繚乱の作品ばかり!
担当個人的なおすすめは、冒頭の「ジャンゴリウムにて」。ある男の人生を愛情を込めて見つめる描写がたいへん情緒深く、世界観に引き込まれること間違いなし。ラストのどんでん返しの切れ味も素晴らしいので、まずはこれを!と、言わせていただきたい1作です。そして「宇宙花と暮らしてみた」。なにげなく育て始めた植物には、なんと言語コミュニケーション能力があった。持ち主に甘えるような、ちょっとワガママな宇宙花の発言ひとつひとつのなんと可愛いらしいこと! そして、本編ラストの「プラネタリウム」は、わずか2000字ほどとは思えない、まるで美しい映画を見たような、後味を噛み締めてしまう作品。
31の、素敵な恋愛と謎と世界が詰め込まれたまさに宝石箱のような本作。お気に入りの一作は、紹介したものの他にも必ず見つかるはず。ぜひあなたの推しの作品、教えていただきたいです。
──『超短編! ラブストーリー大どんでん返し』担当者より
『超短編! ラブストーリー大どんでん返し』
森 晶麿