ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第106回
いまやだれでも
炎上する可能性がある。
漫画家はというと……?
前回、知らない編集者のよく知らない炎上について長々と自分のご意見を語った。
このように「知らない奴の自己主張の道具にされる」というのも、燃えてしまった人間の宿命であり、炎上の恐ろしさがよくわかる話だ。
だが今は他人が起こした焚火を前にアルミカップでコーヒーを飲みながら「この時間が一番落ち着くんですね」と、聞かれていないことを語っている側だが、今のご時世、いつ自分が燃える側になっても不思議ではない。
昔から、何事かやらかして世間から猛バッシングを受けるという事象はあったが、それは主に有名人や立場のある人間のものであった。
それが今や、ネット、そしてSNSの拡散力で、全く無名の高校生でも「他人の寿司に前戯をかます」というリアルNTRビデオレターを自主制作発表というアイディア一つでトレンド入り可能な夢のある世界になった。
「昔ネットがなくて本当に良かった」というのはノートに「俺の考えた最強の異能力キャラ」を描いていた陰キャの口癖だが、むしろネットが無くてよかったのは陽キャ側なのかもしれない。
ちなみに俺が考えた異能力キャラの日本刀持っている率は異常だ。
若いころ仲間内で盛り上がりすぎて、今思えばアウトな悪ふざけをした経験がある人は多いのではないか。
幸い私のような陰キャは仲間と呼べるほどの集団を形成できたことがなく、数少ない友人も全員テンションが低かったため、盛り上がることがなかった。
知人から「高校生のころ友人たちとそこら辺の『木』を燃やして爆笑したがメチャクチャ怒られた」という話を聞いたことがある。
何故そんなことをしたのか謎だが「アレ燃やしたら面白くね?」という提案を「面白いべ」とノリで実行してしまうのが集団の怖さだ。
1人でもやる奴はやると思うが、それも「周囲やネットに煽られて」など、陰には集団がいたりする。
この悪ノリも当時はすぐに撮影できるものもなく、拡散させるネットもなかったため、一部に怒られるだけで済んだが、今同じことをやったら全国に身バレし、進学取り消しなど人生を大きく狂わせた可能性が高い。