むちゃぶり御免!書店員リレーコラム*第10回

むちゃぶり御免!書店員リレーコラム*第10回
 お 題 
一目で一撃くらいたい! 読んでKOされたい! ガツンとパンチが欲しい時に読む本

 ありえない、とんでもない、想像できない。そんな刺激を与えてくれる本が私は大好きだ。普段は真面目に働き、真っ当な人間をやっているのだから、本を読むときはネジの一つや二つ外させて欲しい。

 そう。読んでいるうちに頭のネジがぶっ飛ぶヤツ。

 そんな本に出会ったときは三度の飯も忘れるどころか風呂に入ることもトイレに行くことも、自分が人間であることも忘れて貪り読む。

 そして最近も出会ってしまったのである。史上最強にヤバイ本に。

 それが平山夢明の『俺が公園でペリカンにした話』である。

 物語はあるヒッチハイカーが出会いと別れを繰り返す20編。

 余命3週間のとっつぁんに頼まれ、生きた証を残すために便器と戦う。善行をする。庭で焼かれるヒデヨ、ソーセキ、ユキチ。ヒッチした車の運転手の手が股間に伸びてくることもしばしば、あるときは殴られると金の混じった糞をする子どもと出会い、あるときはうまい肛門のために人を飼育する爺と出会う。

 何を言っているかわからないだろうが、読んだ私ですら何を言っているのかわからないから問題ない。一話読むごとに頭の回線がブチブチと切られていく。世の中を嘲笑うかのような言葉のセンスと、メチャクチャだけど、どこか世の中に通じる皮肉が交ざる平山ワールド。

 20ラウンド全KO間違いなしの一冊。万人にはおすすめしないが、一度文章に殴られてみたいという人はぜひ読んでみて欲しい。

俺が公園でペリカンにした話

『俺が公園でペリカンにした話』
平山夢明
光文社

福原夏菜美(ふくはら・かなみ)
ジャンル問わず仕掛け担当。夢は何不自由なく読みたい本を読み漁れる生活を送ること。


【次のお題】
心もお腹も満たされるおいしい本
【答える人】
うさぎや矢板店 山田恵理子さん
 
本連載は、「〇〇な時に読む本」というお題で、書店員の皆様に「推し本」を紹介していただきます。〇〇部分は、前号執筆した方が、次の執筆者に対して提案します。


〈「STORY BOX」2023年6月号掲載〉

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第108回
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