◎編集者コラム◎

『突きの鬼一 雪崩』鈴木英治


『突きの鬼一 雪崩』鈴木英治
八重洲ブックセンターで行われたトークショーとサイン会。向かって左が鈴木英治さん。右に令夫人の秋山香乃さん。当日用意されたお二人の単行本は、めでたく完売。


 好評「鬼一シリーズ」第5弾。前作『突きの鬼一 岩燕』刊行に際して、作家の尻を鬼のように叩いて刊行予定を死守すると、当コラム欄で豪語した鬼担は、ここに深々と首を垂れ、2カ月に及ぶ発売延期を読者諸兄姉にお詫びせねばなりません。どうして、こう愚図なんでしょう、作家というクリーチャーは。駿河湾で桜エビと一緒に産湯をつかうと、こうなるのか。おっといけない。またまた、作者の飽くなき創作意欲と身を削るような執筆の日々に対する敬意の表明を失念していました(この一文、前コラムをコピペ)。

 遅延の理由はいくつか思い当たりますが、その一は、お年でございましょう。鈴木さんは目出度くも還暦を迎えられますが、体の変調に端を発する精力及び創作意欲の減退に見舞われました。鬼担は当初、またサボって、などと高を括っていましたが、本人にしてみれば、かなり辛い思いをしたらしい。読者諸兄姉も還暦を迎える際は、どうぞお気をつけなすってください(この一文、変形江戸弁使用)。

 そして、その二。上記のキャプションをお読みください。鈴木さんのデビューは、言わずと知れた第一回角川春樹小説賞特別賞受賞作『駿府に吹く風』(刊行に際して『義元謀殺』に改題)。9月、その鈴木さんと秋山香乃令夫人が今川ものを同時刊行したのです。久方ぶりの歴史小説、作者が精魂を傾けることは目に見えている。となれば、鬼一シリーズの遅れは避けがたい。殿、おやめください、と喉まで出かかりましたが、さすがの鬼担も、ここはグッと堪えました。書きたいものを書いてこそ作家。なにを書くかは、鬼担といえど、容喙してはならないでしょう。

 というわけで、遅れに遅れた第5弾、ようやく刊行に漕ぎつけました。前作で実母・桜香院の腹心・黒岩監物に命じられて、忍びの棟梁・東御万太夫が放った羽擦り四天王を見事倒した鬼一、神酒藍蔵、興梠弥助のトリオ。ことここに至って東御万太夫がおめおめと引き下がっていると、よもや読者諸兄姉は思いますまい。打倒鬼一を心に秘め、御嶽山麓を出立して江戸入りした万太夫は、さっそく、黒岩監物と面談する。そこで、事態は思わぬ方向に転じる。鍵は北山藩百目鬼家の財政を支える寒天事業。次男・重二郎を家督につけたいと念じる桜香院の執念。寒天問屋から甘い汁を吸っていた監物の狼狽。物語は様々な思惑を秘めて大きくうねり始める。そして、相まみえる鬼一と万太夫。ついに、万太夫が見せたの術。

 この物語、読み出したら、もう、やめられません。

──『突きの鬼一 雪崩』担当者より