◎編集者コラム◎ 『おれたちを齧るな! わしらは怪しい雑魚釣り隊』椎名 誠
◎編集者コラム◎
『おれたちを齧るな! わしらは怪しい雑魚釣り隊』椎名 誠
シーナ隊長が「怪しい探検隊」の正統後継団体として「雑魚釣り隊」を結成したのは2005年のことだ。結成から既に17年もの月日が流れたということになる。日本や世界の色々な海や川や湖や水たまりでバカ騒動を繰り広げてきたこのシリーズも、今作でなんと7作目となった。
それだけ長期間、顔触れも大して変わらない男ばかりの集団でやることはあるのか? そんな疑問を抱く方がいても不思議ではない。なぜなら、よくも飽きずにまあ、と隊員たちが毎回ビールを飲みながら感心し合っているくらいなのだから。バカなんです、本当に。
私はその雑魚釣り隊の担当編集者、隊では「よろず世話人」である。どこに行こう、何をしよう、何を釣ろう、といつも頭を悩ませてきた。それに、いざ旅に出れば隊員たちは「腹減った」「何か食わせろ」「もっと飲ませろ」と、とにかくうるさい。だから、雑魚釣り隊って楽しそう、なんて思っている人がいたら今すぐ考えをあらためて頂きたい! 大変なんですよ、本当に! といつも叫びたいくらいに思っていたのだ。実際、夜の酒場や早朝の海岸、アタリもない竿をボンヤリ眺めるだけの船の上などでは叫んでいたかもしれない。
でも、それがいかに贅沢な悩みだったのか、今回この文庫の編集作業で思い知ったのだった。雑魚釣り隊はいま、結成以来、最大のピンチを迎えている。コロナの影響でどこにも行けない、集まれない。「週刊ポスト」の連載も1年近く休載中だ。あの悩ましく、叫びだしたくなるような日々が懐かしくて仕方がない。みんなで焚き火を囲んでビールを飲む。雑魚釣り隊で「黄金時間」と呼んでいるあの幸せな時間が早く戻ってきてほしい。
世の中には同じような思いを抱いている人もたくさんいると思う。幸せのお裾分けというには、あまりにもはしたなく、むさ苦しい男たちのバカ話ばかりだが、家で飲む缶ビールのツマミくらいにはなるかもしれない。よろしければ読んでやってください。
──『おれたちを齧るな! わしらは怪しい雑魚釣り隊』担当者より
『おれたちを齧るな! わしらは怪しい雑魚釣り隊』
椎名 誠