◎編集者コラム◎ 『アイスランド 絶景と幸福の国へ』椎名 誠
◎編集者コラム◎
『アイスランド 絶景と幸福の国へ』椎名 誠
椎名誠はこれまでにたくさんの国を旅して、その体験を書き記してきた〝旅する作家〟である。その椎名さんが最後の海外取材と位置づけたのが2014年のアイスランドの旅であり、その記録が本書である。
この旅のテーマは「幸せ」。アイスランドは世界の中でも幸福度や女性の社会進出度のランキングにおいて上位常連国だ。氷河と火山の国といわれるように、自然的には厳しい土地でありながら、なぜ人々は幸せなのか。椎名さんは現地の人たちと語り合いながら、思考を深めていく――。
というように、この本は椎名さんの紀行文の中ではとても硬派、マジメな本である。単行本は日経ナショナル ジオグラフィック社から2015年に刊行され、旅に同行した編集者もとてもしっかりした方である。
一方、文庫担当編集の私はこの旅に同行していない。なので、本来、旅の思い出や裏話などを書けばいいであろうこのコラムに書くことがない。困った。
そこで本書ではモノクロで掲載している椎名さん撮影の写真をカラーで紹介させて頂くことで裏話の変わりとさせて頂き、少しだけ私が思う「幸せ」について書いてみたい。
私は「怪しい探検隊」の正統後継組織である「怪しい雑魚釣り隊」のよろず世話人という立場で椎名さんと色んな旅をしてきた。この雑魚釣り隊の基本方針は自分たちで釣った魚を、自分たちで捌いて、焚き火を囲んで酒を飲みながら食べるというものである。
隊員は全員男。いい年したオッサンが集団で一体何をしているんだ、という声もあるだろうが(旅の様子は『わしらは怪しい雑魚釣り隊』シリーズとして刊行されているのでご興味がある方はぜひお読みください)、焚き火を囲んで陽気に「雑魚釣り隊の歌」(本当にある)など歌っていると、「ああ楽しいな~、幸せだな~」なんて思ってしまうのだ。
どうだろうか? 幸せってこういうことではないのだろうか? 違うかな……?
コロナ禍でこれまでの日常が大きく変化してしまった今、この本が改めて「幸せ」について考えるきっかけになったり、読書そのものがちょっとした幸せだと感じてもらえれば、編集者としてはこれ以上の幸せはありません。
──『アイスランド 絶景と幸福の国へ』担当者より
『アイスランド 絶景と幸福の国へ』
椎名 誠