◎編集者コラム◎ 『聖女か悪女』真梨幸子

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『聖女か悪女』真梨幸子


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〝イヤミスの女王〟の異名を持ち、数々の衝撃的なミステリー作品を生み出してきた真梨幸子さん。でも、すごいのは、小説の内容だけではありません。毎作、書店でつい二度見してしまうほど装丁にインパクトがあるのです。『6月31日の同窓会』(実業之日本社文庫)では、美しくセッティングされた真っ白なテーブルに置かれたリンゴがナイフで突き刺されている写真に、くぎ付けになった人が多いことでしょう。大ベストセラーとなった『殺人鬼フジコの衝動』(徳間文庫)は空っぽの鳥かごの周りを赤い花びらが舞うヴィジュアルが何とも不穏でしたし、『祝言島』(小学館文庫)では、顔にアザのある女性が描かれた装画が、本編への大きなカギになっています。

 さて。前置きが長くなってしまいましたが、このたび刊行する『聖女か悪女』は、〝真梨幸子史上もっとも酷いことが起きる〟超弩級のイヤミス。中身もさることながら、装丁も史上最高にぶっ飛んでいるのです。

 装丁のコンセプトを決めるにあたって、真梨さんにご意見をうかがったところ、「この小説は、パーティだから」とおっしゃいました。マルキ・ド・サドの禁書『美徳の不幸』にオマージュを捧げた本作では、〝上級国民〟たちがとんでもない遊びを繰り広げます。そこで、「悪いパーティ」をテーマに、デザイナーの鈴木成一さんとアイディアを出し合いました。その中で出てきたのが、「石膏像に苺ジャムをぶちまける」という斬新すぎる案(苺ジャムは、ミステリーの主役である〝血〟のイメージです)。

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 善は急げ(?)と石膏専門店で像を買い、実験をしてみたところ、思うように飛ばないジャム……。試行錯誤の結果、赤い絵の具に変更し、なんとか理想の飛沫を生み出すことに成功しました。それをさらに、鈴木成一デザイン室きっての写真家である平林美咲さんが撮り下ろし、ついに、聖と俗が同居する、不道徳ながらもどこか高貴なかつてないヴィジュアルが誕生したのです。

 こうして、あり得ないほどの時間と労力をかけて完成した『聖女か悪女』、ぜひとも書店で実物を見ていただけると嬉しいです。そして、よろしければそのままレジにお持ちいただけるとますます嬉しいです。次の真梨さんの新刊はどんな装丁にしようか、今から楽しみでわくわくしています。

──『聖女か悪女』担当者より

聖女か悪女

『聖女か悪女』
真梨幸子

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