◎編集者コラム◎ 『私が先生を殺した』桜井美奈
◎編集者コラム◎
『私が先生を殺した』桜井美奈
『私が先生を殺した』の編集者コラムをご覧いただき、ありがとうございます。本作の編集業務を担当したA田と申します。
『私が先生を殺した』は前作『殺した夫が帰ってきました』が17万部を超える大ヒット作となった桜井美奈先生が描く、最新ミステリー作品です。
『殺した夫が帰ってきました』の冒頭では暴力夫が山奥の崖から転落しますが、本作では学校一の人気教師が、全校生徒の目の前で屋上から飛び降りるところからスタートします。
しかし、そんな誰が見ても自殺だったはずの教師の死は、教室の黒板に「私が先生を殺した」という匿名の犯行声明があったことで一変。
先生を殺した「私」は誰なのか。「私」はなぜ先生を殺したのか。そうした秘められた謎を追っていく物語となっています。
本コラム執筆にあたり、この作品ができあがっていった経緯を振り返ってみると、元々は「次はデビュー作と同じ、学園モノを書いてみたい」という桜井先生の言葉からスタートしたと記憶しています。
桜井先生のデビュー作は2013年に第19回電撃小説大賞で大賞を受賞した『きじかくしの庭』という、学校の片隅にある荒れ果てた花壇で紡がれる学園青春小説。
デビューからちょうど10年にあたる今年。そんな記念すべき年に、ご自身の原点を振り返るような設定・舞台で勝負がしたいとおっしゃった桜井先生の強い想いをひしひしと感じながら、作品作りは進んでいきました。
自然と打ち合わせの回数は多くなり、特にお互いで「どうしましょうか……?」と頭をひねったのは、各章の終わりをどう描いていくか、という点でした。
本作は章ごとに語り手が変わっていき、事件の全体像を少しずつ浮き彫りにしていく形式をとっているのですが、章ごとに主役が変わるわけですから、その終わりには「オチ」として、あっと驚く出来事や、続きを気にさせる仕掛けを入れたいと考え、議論が白熱していきました。
ネタバレになってしまうため、詳細な内容を記載することはできないのですが、この各章を繋げるための仕掛け作りを、数々の打ち合わせを経て桜井先生が丁寧に丁寧に練り上げていただき、作品が完成していきました。
そんな各章の終わりには、いったいどんなドラマがあるのか。これから作品を読む読者の皆様におかれましては、ぜひご注目いただきたく思います。
また、もう一点、個人的な注目ポイントとしてご紹介させていただきたいのは、最後の最後に紡がれた、意外な人物から学校の生徒たちに贈られたメッセージです。
人生の大きな岐路にいる人、新しい環境に挑もうとしている人、どう生きるべきか悩んでいる人、そんな皆様の心には、特にささるメッセージになっているのではないかと思います。
振り返れば、打ち合わせの間、桜井先生からは「読者さんにとってはどう見えますかね」「こっちのほうが読者さんは楽しんでくれますよね?」と、読者の皆さんに真摯に向きあおうとする言葉が幾度も登場していました。
ご自身が書きたいものを書きながら、たえず読者さんの興味も考え続ける。デビュー10周年に出る記念すべき本作品には、そんな桜井先生の熱い願いと読者さんへの思いが、これでもかと詰まっているように感じます。まさに、渾身の作品。書店様でお見かけの際は、ぜひお手にとってみてください。ご注目のほど、何卒よろしくお願いいたします
──『私が先生を殺した』担当者より
『私が先生を殺した』
桜井美奈