◎編集者コラム◎ 『処方箋のないクリニック 特別診療』仙川環
◎編集者コラム◎
『処方箋のないクリニック 特別診療』仙川環
5万部突破! の『処方箋のないクリニック』待望の続編が遂に登場!
2023 年9月に刊行された前作から1年がたち、ついに続編を読者の皆さまにお届けできます。
医療ミステリーの第一人者と言われた著者は、いままで遺伝子操作、感染症、パンデミックなど、シリアスな医療作品の書き手として知られてきました。
しかし、前作はそれまでと全く違う作風の「ハートフル医療小説」を世に問うことになりました。
世界を覆ったコロナ禍を体験した読者には、どんなに恐怖に満ちた医療ミステリーを上梓しても、もはやコロナ前のようには届かないのではと、著者と編集担当者で意見が一致したからです。
コロナ禍を経て、一番大事なものは何か。それは家族の健康であり、自分の健康であると、誰もが考えるようになりました。
医療をテーマとするならば、その現実性こそが読者の求めているところではないでしょうか。
ごく普通の病気、ごく普通の家族の罹患。小説としてはあまりにありふれた題材かもしれません。しかし、いったん家族が病気になると、その波紋はとても大きいはずです。
誰がどんな病気にかかったのか、治療はどうするのか、だれが看病するのか、かかる費用はどのくらいか。自分自身であれば、仕事はどうするのか、育児はどうするのか、ひとりで治療できるのかなど、直面する難問は山積するばかりです。
病院に行っても「3時間待って3分治療」という現状では、医師は病気を治療することに追われ、家族の問題など相談できるはずがありません。
しかし、そんな家族の相談に乗ってくれる医師がいたら……。
誰もが思うそんな医師・青島倫太郎を主人公とした前作は、圧倒的な支持を受けました。
プルーフ本を読んでくれた書店員さんからは
「こんな先生に診てもらいたい」
との言葉をいただきました。
発売するや、あっという間に増刷が決まり、2024年9月現在で9刷5万6000部となっています。
そんな反響の一方で続編を期待する声をたくさんいただきました。
発売後、時間を置かずにWEB小説丸で『処方箋のないクリニック 特別診療』の連載をスタート。連載した5話に書き下ろし1話を加えた全6話を収録したのが、同名の今作品となります。
解説は、医師で作家の夏川草介さんにお願い致しました。夏川さんはオビに
「この不思議な診療所は今の医療に、足りないものを教えてくれる」
という推薦文を寄せてくださり、解説でも、医師の視点から読みどころを細やかに示してくれています。
前作では、緑内障、高血圧、肥満、アトピーなど、ありふれた症状が引き起こす家族のトラブルを描きましたが、今作品ではさらなる難しい患者たちが登場します。
その内容の一部を紹介します。
「ストロング系女子」 左遷されたキャリア広報ウーマンは、ストレス解消に強い酒を飲むのが習慣になってしまい……
「アンチスイーツ」 Uターンして古民家カフェを立ち上げるつもりのサラリーマン。移住前に母の思いも寄らぬ病気が発覚して……
「悩める港区女子」 人生一発逆転を狙う輸入商社勤務の女性。理想の彼をゲットするため、過激なダイエットを選んだが……
「スマホ首ゲーマー」 ゲームにはまっている元大学生は青島総合病院内のコンビニでアルバイト中だが、同僚女性が突然店で倒れてしまい……
「理想の最期」 定年後におだやかな暮らしを過ごしている夫婦。夫が急に終活について思いを語り始めたのはなぜなのか……
「アメリカから来た親子」 青島の前に現れた蕎麦アレルギーの男の子とその母親。封印していた留学時代の記憶と人生を変えた事件が甦る……
いずれも、著者の圧倒的な取材力とリアリティ感、ユーモア感に溢れたストーリー全6話です。
読んだ後、健康とは、家族とは……思いを馳せること必至です。
──『処方箋のないクリニック 特別診療』担当者より