◎編集者コラム◎ 『ときどき、京都人。』永江朗
◎編集者コラム◎
『ときどき、京都人。』永江朗
著者で人気文筆家の永江朗さんは、東京・自由が丘に家を持っていましたが、趣味である茶の湯を極めるべく京都の町家を購入しリノベーション。誰もが憧れる東京と京都の二都生活をスタートさせます。その経緯は、前著『そうだ、京都に住もう。』(小学館文庫)に描かれています。
第2弾となる今作品は、二都生活を経て、遂に京都への定住を決めて、移住生活を進めていく様子を描いたものです。
「ときどき」とはいえ、京都に住んでいるからこそ見えてくるものもあれば、「よそさん」だからこそ気づくこともある
(本文より)
永江さんは、夜明けとともに起きて仕事をして、近くの神社にお参りして井戸水をいただきお茶を立てて一服。午後からは路地裏を探検し古本屋覗き喫茶店に入り、夜は気に入ったお店で酒を飲んで……という、誰もが憧れる生活が日常です。
特に食生活は羨ましい限りです。
春はたけのこ、夏は鮎。四季の移り変わりを味で知るという、首都圏では叶えられないことも、ごく普通のこと。
京都に住んで好きになった食べ物はいろいろあるが、何といってもいちばんは「きずし」だ。外で晩ごはんを食べるときは、必ず注文する。冬は燗酒ときずしから、夏はビールときずしからはじまる。
(本文より)
きずしとは何か。ごはんの上に刺身を乗せたにぎり寿司の一種かと思ったがそれが違った。
ところが、口に入れて びっくり。関東のしめさばとは違う。味が深くて濃いのだ。さすが鯖街道の終着駅、京都だと思った。
(本文より)
二拠点生活を続けていた永江さんが、なぜ京都を終の住処に決めたのか。
京都は時間がゆっくりと流れている。この街に暮らしている人はせかせか急いでいない。それを痛感するのは新幹線を降りたときだ。東京から京都に着いて、新幹線中央口を出る。エスカレーターで上がると南北の自由通路がある。西側には伊勢丹。この自由通路を歩いている人の歩調がゆっくりしている。新横浜駅や品川駅だとこうはいかない。みんな急いでいる。なんだか殺気だっている。ぼんやりしていると突き飛ばされる。なんだか、一分、一秒を争っているみたい。流れる空気がちがう。
(本文より)
京都移住の素晴らしさと現実を、等身大で描いた京都生活日記。地元目線の京都ガイド本としても、セカンドライフの指南本としても充実の一冊です。
──『ときどき、京都人。』担当編集者より