ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第109回

ハクマン第109回
某作家と対談をすることに。
俺より売れてる奴とは
口をききたくなかったのに……。

「嫉妬心」というのは、ただサクセスした人間に起こるものではない。
むしろ人間は「苦労して成功した人」の話は割と好きな方である。

しかし、Twitter だとサクセスしたという結果のみが目に映り、その裏にある苦労情報まではわからないため「何の苦労もなくサクセスしている奴」に見えてしまい、余計嫉妬心が湧くのである。SNSでバズっているインフルエンサーなどに対し、特に理由のない怒りが湧いてしまうのは「ヤッとる」だけでなく「SNS でちょっとイイ感じの写真をあげたり深イイ風なことを言うだけでチョろくヤッとる」という偏見があるからだろう。

逆に「この Twitter 漫画を一発バズらせるまでに一族郎党皆殺しにされている」などの苦労が分かれば「それなら成功して良かった」と思えるし、逆に「そこまでやって3000RTか…」と、同情心まで湧いてしまうかもしれない。

確かに、売れている作家ほど「突然の長期療養」に入ってしまうケースが多いようにも思う。
売れていない奴が寝込んでもニュースにならないのでそう見えるだけかもしれないが、売れるのも大変だが「売れるストレス」というのも並ではないのだろう。

しかし、そのような内なる気苦労や悩みを全体公開してくれる、メンヘラアカウント人気作家というのもなかなかいないため、人気作家は難なくそれをやっているように見えてしまうし、何だったら俺以外全員上手くやっているように見えてしまうのだ。

だが、今回、やはり他人も同じかそれ以上に苦労があるとわかって良かった。

逆に、バズらなすぎても病むが、バズったがゆえに病むことも多い、ということがわかり、一体漫画家は何をすれば救われるのかわからなくなってきた。こういう時に満を持してご登場されるのが「宗教」なのかもしれない。

「ハクマン」第108回

(つづく)
次回更新予定日 2023-06-25

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『仮面幻双曲』大山誠一郎
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