ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第117回

「ハクマン」第117回
「作者体調不良のため休載」
を見かけることが多くなったが、
「休む」という判断は難しい。

私の周囲でも、担当が立て続けに体調不良で休職している、担当が休めて私が休めぬ道義はないので、休む時は休もうと思う。

実際私も若いころに比べ、体調不良を感じることが増えて来た。
特に体力の低下、そして冒頭の通り、目に不具合を感じることが増えて来た。

ちなみに下瞼はこれを書いている間も躍動を続けており、ある意味私の体の中で最も元気とも言える。
前にも書いたかもしれないが、ここ数年「目尻から汁が出る」という奇病に悩まされている。
しかし、下瞼の痙攣と同じく「目尻から汁が出る、それ以上、以下でもない」というカッコいい状態が続いているだけなのだ。

よって、これまで皮膚科と眼科両方に行ったのだが2回とも「君にとってこれは医者に来るほど深刻なことだったのか?」という塩分の効いた対応で塗り薬と目薬を貰い、未だ完治に至ってない。
確かに、医者は私の瞳に輝く「一瞬の汁」しか見ていないので「こんなことで?」と思うかもしれないが、JKの友情の如く不滅な「ズッ汁」状態はかなり不快なのである。

それ以前に「病院に着いた瞬間高熱や激痛が収まる」という怪現象があるように、医者の前に座った途端、汁の出が悪くなり、どこが悪いのかさえ伝わっていなかった可能性すらある。

下瞼の痙攣も、時間が経てば治る、寝れば治ると書いてあるが、一晩寝ても治っていないし「脳腫瘍の可能性がある」という、ネット医療情報にありがちな急展開もご用意されているので、あまりにも止まらない場合は病院に行って来ようと思う。

しかし、医者の前に座った途端、絶え間なく続いていた下瞼のドラムソロが突然終焉を迎え紅に染まる自分の姿も想像できる。

その時は「実は数年前から目汁が」とシフトチェンジする用意も出来ている、だがその時は目汁もいつもよりは渇き気味で、ただの顔を洗ってない社会性に欠ける人になっていることだろう。

つまり、病気はいろんな意味で「病院に行った方が治る」ということだ、体調不良の人は早く休んで病院へ行こう。

「ハクマン」第117回

(つづく)
次回更新予定日 2023-10-25

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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◎編集者コラム◎ 『ロボット・イン・ザ・システム』デボラ・インストール 訳/松原葉子