ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第133回

「ハクマン」第133回我々は「先生」と呼ばれるものを
盲信しすぎるところがある。
税理士の節税対策は万全か?

昔いた会社では、たまたま依頼した社労士の先生が失踪し、後に別会社の金を横領し資格停止中にもかかわらず社労士の仕事を続けて資格をはく奪されたと判明した。

先生だって間違いはもちろん罪すらおかすのである、そして数いる社労士の中から罪人を選ぶ元弊社の引きもすごいし、元弊社はその後潰れた。

私が依頼している税理士は5年近くメアドを教えてくれなかった以外に不自然な点はないのだが、私のような仕事をしている顧客はあまり持っていない印象だ。

弁護士でも、債務整理が得意とか、例え不倫してても相手有責にしたけりゃコイツに頼め、というような「得意分野」があるはずだ。

漫画家に特化した税理士に依頼すればもっと抜本的な節税が可能なのではないか、という疑念がくすぶり続けていたのである。

そして先日、別の仕事で漫画家の顧客を数多く抱える会計士の人と話す機会があったので、もっと大幅に税金を減らす方法があるのではないかと尋ねてみた。

  

詳細をここで語ることはできないが、結論だけ言うと「払えカス」ということらしい。

漫画家に限らず、もっとも高額になりやすい経費は人件費であり、アシスタント0の人件費0の状態で「もっと節税できるのでは」という発想が生まれてくるのが逆に怖いぐらいだという。

自分の思いがけないサイコのパスみに気づかされただけに終わったが、今依頼している税理士で問題ないとわかっただけでも良かった。

仮に「自分に任せれば還付までもっていける」と言われたところで、パスっている割には気が弱いので現税理士に「他の人に頼みます」と告げることができず、もっと節税できるとわかっているのに多額の税金を支払い続けることになり、地獄の深度が増すだけなのでむしろこれで良かったのだ。

しかし、経費というのは明確な線引きがされているわけではなく、特に漫画家はあらゆるものを「漫画の資料」と言い張ることができる。

ただし、あれもこれも経費にするほど税務署訪問チャンス率もアップするため、経費に関してはもはやチキンレースだという。

よって税務署上等でギリギリまで経費として申告する者もいれば、奴らに家の敷居を跨がれ「本当にこの白石麻衣写真集は資料なんですか?」と嫌味を垂れられるぐらいなら最初から最低限の経費申告しかしないノーガード戦法を取る者もいるらしい。

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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