ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第20回
「もっと昔に勉強をしとけばよかった」と思う。
だが地方には漫画家になる勉強をする場所がない。
私はデビューから10年ずっと地方で漫画家をやっているが、特に不便と感じたことはない。
しかし「漫画家になる勉強」をする場所がないという点では地方は未だに不便なのだ。
地方でも漫画家にはなれるし活動も出来るが、漫画家志望をやるのは厳しい、というよく分からん逆転現象が起こっているのである。
私もせっかく無職なのだから、これを機にもう一度漫画の勉強をしてみようかと思ったが、当然「漫画講習」みたいなものは我が村には存在しない。
「デッサン教室」とか「絵画講習」などは辛うじて見つかったが、どう見ても現役をリタイアされた方が、趣味とボケ防止のために行くところである。
今現在、生活がかかっている奴が行くところではない。
その中でも目を引いたのは「裸婦デッサン講座」が「定員」になっていた点である。
数ある講座の中で、定員になっていたのはそれだけだ。
断っておくが、我が村とて、そうまでしないと女の裸が見られないというわけではない。
信じられないことに「インターネット」という奴が通っているので、見ようと思えばもっと刺激的な物が見られるはずだ。
しかし、他の美術系講座に言っていた友人も「裸婦の時はいつもいっぱいだった」と言っていた。
そして美術館ですら「ヌード」を扱う時は、客が2倍になるという。
これは眉を顰める話ではない。
世の中には己の性欲を満たすために犯罪行為すら厭わない人間がいるのだ。
それに対し「何が何でも合法で女の裸を見ようとする姿勢」は評価されるべきであろう。
おそらく、花や果物を描くより、ヌードの方がボケ防止にもなるはずだ。
ともかく、漫画の勉強をする道は閉ざされたのだが、当然「勉強する場所がない」を言い訳にしている時点でダメなのだ。
ちなみに、私の通っていたデザイン学校は、私の卒業後に「漫画コース」が出来た。
そしてこれが今わが県唯一の漫画専門学校になっている。
実際、全国漫画誌で活躍していたベテラン作家を講師に呼び、授業のクオリティはかなり高いらしい。