ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第27回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第27回

親戚の集まりでは、
できれば何も聞かれたくない。
それが漫画家の本心だ。

確かに、いくらアニメやゲームがたくさんあると言っても、役数は限られているし、それすら既に売れている声優が取り合うことになるだろう。
「加齢があまり影響しない」のが声優の良いところであり、悪いところでもある。女優なら30過ぎて女子高生の役が来ることは滅多にないだろう。
しかし、声優は70過ぎても小学生男子や魔法少女、謎のマスコットキャラクターの役が出来るのだ。つまり「いつまでも席が空かねえ」ということになってしまう。

しかし、最近はユーチューブなど、個人で何かを発表する場には事欠かない。
仕事がなくても、自分でシナリオやキャラを描いてボイスドラマを発表したり、販売したりと、声優の活動の幅も広がってきており「待つしかできない」ということは減ってきているのではないだろうか。

最近の若者はテレビよりネットやユーチューブを見ているというので、そこからブレイクできる可能性は十分にある。

だが、問題は、自分でシナリオや絵を描いたり、何より動画編集してネットにアップできる知識がないといけない、ということだ。

漫画家も出版社を通さず仕事が出来る時代になったと良く言うが、それは出版社がやっていたことを自分でやる能力がある人だけである。

つまり、漫画が描けるとか演技が出来るという「一芸」だけではよほど才能がないと難しい世の中になってきているとも言える。

もしお子さんが「漫画家」「声優」「ユーチューバー」のどれかになりたいと言い出したら、もっとも地雷に見えるかもしれないがまず「ユーチューバー」を勧めた方が良いかも知れない。
おそらくこれが一番総合的なプロデュース能力が身につき、成功しなくても「つぶし」が利くような気がする。

 

ハクマン

(つづく)
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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『死ぬがよく候〈四〉 風』坂岡 真
◎編集者コラム◎ 『黒と白のはざま』著/ロバート・ベイリー 訳/吉野弘人