ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第41回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第41回

コロナのせい(という設定)で
以前にもまして宣伝には
力をいれるようになった

現在8月4日、漫画家はお盆進行の真っただ中、と言いたいところだが、本当の意味でお盆進行が関係あるのは雑誌連載の漫画家だけである。
前にも書いたと思うが、何故お盆や年末進行と言って締め切りが前倒しになるかというと、雑誌を刷る印刷所が「誰が何と言おうと盆と正月だけは休む」とおっしゃられているからである。

平素、雑誌制作の最終工程として多大なるご迷惑をおかけしている印刷所様がそうおっしゃられているなら、編集者も漫画家もそれに合わせて原稿を早く上げるしかないのだ。

よってWEB連載の担当が「お盆進行」などと口にしたら、それは真のお盆進行ではなく、己が休むための締め切りを告げているだけだ。
そもそもWEBに「この日までに原稿を上げないと間に合わない」という概念は存在しない「インターネットが閉まっている」などということが未だかつてあっただろうか。

むしろこちらが締め切り通りに原稿を出しているのに向こうが更新を忘れ、しれっと次の日掲載されているぐらい適当である。
酷い時は「次の更新は○年○月○日です」というお知らせが100年後になっていたり逆に過去に遡っており、読者は時をかける少女にならないと続きを読めない仕様になっていたりする。

このようにある程度時間の融通が利く、修正が利くというのはWEBの良いところだが、それ故に明らかに雑誌よりぶったるんでいるのがWEB連載というものである。
振り回されるのは読者ばかりであり、そういう作家と編集は一度輪転機に巻き込まれるところからやり直した方が良い。

そんなわけで、お盆進行が真に関係あるのは雑誌連載、それも締め切りがお盆にかからない月刊連載作家はあんまり関係なかったりするので、漫画家全てがお盆進行に苦しんでいるわけではない。

ただ、中2の時、眼帯やギプスという、どちらかと言うと負のイメージがあるものに憧れてしまうように漫画家になりたてのころは「修羅場」とか「デスマーチ」という言葉を「漫画家らしくてハクい」と思ってしまったりするのだ。
よって、お盆進行が無関係で大して修羅ってなくてもツイッターに「これから地獄の進行はじまります…」みたいなことをつぶやいてしまうし、何なら今でもたまにやってしまう。

そんなわけで、今年も私はあんまりお盆進行が関係ない。週刊雑誌連載もあるが、知らない内にお盆前分は終わっていたようだ。
しかし、次の締め切りが「お盆明け直後」なのは相変わらずである。
編集者はこの「お盆中仕事をする前提の締め切り」を同じ作家に3回出すと来世はカメムシになるというルールをもっと周知させた方が良い。

つまり今あまりトピックがないのだが、変わったことと言えば、コロナのせい(という設定)で漫画家生命が断たれそうになって(被害妄想)以来、以前にもまして宣伝には力をいれるようになった。

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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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