ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第41回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第41回

コロナのせい(という設定)で
以前にもまして宣伝には
力をいれるようになった

確かに1巻に重版がかからないと2巻の部数は1巻より激減し、ますます本屋に置かれなくなり売れなくなるという悪循環が起こるため、電子が極端にバカ売れしていない限り、紙が売れていない本にはどっちみち先がないという判断になるのは仕方がない。

またネット書店での買い物というのは、目当ての商品に一直線で向かってしまうことが多いが、書店の場合は「鬼滅の刃を買いに来たが、全く知らない漫画の表紙に描かれている少女がどう見ても俺を誘っており、気づいたら買っていた」というような「一見買い」が起こらないこともない。
電子書籍のシェアが伸びてきたとは言え、やはり紙の本、そしてそれが本屋に置かれるというのは大きなことなのである。

どちらにしても売れる売れないは実力の問題なので仕方がないのだが、読者に買ってくれとお願いする時「いや、電子でも十分嬉しいんですけど、出来れば書籍の方が。いや何でもないっす。いやいや電子でもイイですから。いやいや~」みたいなことを言わなければいけないのが心苦しい。

「何か食べ物を恵んでくださらんか…あ、できればマックじゃなくてモスで」と言っている感じがする。

しかし、もちろん電子書籍の購入が全く作家のプラスにならないわけではない。絶版しているような漫画でも、電子書籍なら購入された都度作家の収入になるからである、28円とか入る。

だが、その28円に命と心を救われているのだ。何せ私はアマゾンアフィでケツ拭き紙を買っている作家である。

ハクマン41回

(つづく)
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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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