ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第5回
しかし私は、漫画家の経費の要、人件費がゼロ円なのである。何故ならアシスタントがゼロ人だからだ。
「私を応援してくれる壁のシミはアシスタントに入りますか?」と聞くべきかとも思ったが、夫の仕事関係の人にそれを言うのは、後々後悔する事態になるし、そもそも壁に給料は払っていない。
つまり、早急に壁に500円玉をねじ込む穴をつくるべき、ということだ。
アシスタントを使ったことはない。
「貴様の漫画のどこに使うのか」と言われればそこまでだが、使った方が、早いしクオリティが上がるのは事実だ。
他の人だって1人でやろうと思えばできるのかもしれないが、アシスタント代をケチって漫画の質が下がり、仕事がなくなるようなら本末転倒である。
会社もフリーランスも1人で無理をして良いことなど何もないのだ。
私がアシスタントを雇わない理由は、1人でも何とかなってきたから、というのもあるが「アシスタントと意思の疎通が出来る気がしない」からだ。
いくら腕の良いアシスタントを使っても、指示をするのはこちらだ。「自由に余白を埋めてくれ」では、私の適当な絵の後ろにリアル志向のサクラダファミリアが建ちかねない。
だが私は、私の適当な絵の後ろに何を描いたら良いか、アシスタントに説明できる気が一切しないのだ。そして「私の適当な絵の後ろに私が適当なものを描いた方が早い」となってしまう。
漫画家と言ったらコミュ症、というイメージがあるだろう。
「○○は × × 」という断言口調は、炎上の元だと1日68時間ツイッターをやっている私はよく知っているが「コミュ症の傾向がある」と言えなくはないかもしれない。
だが今でも多くの漫画家がアシスタントと意思疎通しながら漫画を描いているのだ。
私はアシスタントを雇っている漫画家をコミュ症とは認めない、壁に応援されるようになってから、一昨日来い。