【ランキング】心理リサーチの女性被験者に危険が迫る……! ブックレビューfromNY<第39回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの39回目。今回はちょうど一年前、第27回で解説した本格サスペンス小説”The Wife Between Us”の著者2人による新作を紹介します。

<第39回>美人博士の心理リサーチに参加した女性被験者に迫る危険!

An Anonymous Girl 書影1
An Anonymous Girl/ by Greer Hendricks and Sarah Pekkanen
St. Martin’s 2018.375ページ. US$27.99

今月のベストセラー事情

今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2019年2月3日の週)[1]を紹介する。

1.Where the Crawdads Sing

By Delia Owens
Putnam

1969年、ノースカロライナ州の静かな町でチェース・アンドリューの死体が発見された時、地元の人たちは、当時湿地帯で一人暮らしの「湿地帯の少女」と呼ばれていた若い女性を犯人だと思った。
(ベストセラー20週目)


2.Liar Liar

By James Patterson and Candice Fox
Little, Brown

刑事ハリエット・ブルーは連続殺人犯であり、兄を破滅に陥れたレーガン・バンクスを追っていた。レーガンは地下に潜っていたが、ハリエットに「捕まえられるものなら捕まえてみろ。」と電話で挑戦してきた……。「ハリエット・ブルー」シリーズ3作目。
(ベストセラー初登場)


3.Reckoning

By John Grisham
Doubleday

ミシシッピー州クラントンに住むピーター・バニングは第二次世界大戦のヒーローであり、名家の出身、良き父親・隣人であり、メソジスト教会のメンバーだった。ある10月の朝、ピーターは教会へ行き、友人でもあるデクスター・ベル牧師を射殺した。そして、警察に対しても誰に対しても彼はただ、「何も言うことはない」と述べるだけだった。
(ベストセラー13週目)


4.Turning Point

By Danielle Steel
Delacorte

4人の著名なアメリカ人の心的外傷(トラウマ)専門の医師が、パリで行われた「大量死傷者」研修プログラムに参加し、研修の過程で難しい選択を迫られる羽目に陥った。
(ベストセラー2週目)


5.An Anonymous Girl

By Greer Hendricks and Sarah Pekkanen
St. Martin’s

ジェシカ・ファリスはシールズ博士の心理リサーチ・プロジェクトの被験者になったことで、心の奥底に閉ざされていた本当の自分と向き合わざるを得なくなった。そして、シールズ博士の心の闇に巻き込まれていった……。
(ベストセラー2週目)


6.Fire and Blood

By George R.R. Martin
Bantam

米国で人気のファンタジー・テレビドラマ・シリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作者の最新小説。テレビドラマの時代より300年以上前に始まったターガリエン王朝の栄枯盛衰の物語。二部作の最初の作品。
(ベストセラー9週目)


7.The Only Woman in the Room

By Marie Benedict
Sourcebooks Landmark

ヘディ・キースラーはオーストリアの女優で、武器商人だった夫と結婚した後、女優を辞めた。しかし、強圧的な夫やナチ政権に嫌気がさし、アメリカに逃れた。そして、アメリカでヘディー・ラマーの名前でハリウッド・スターとなり、数々の映画に出演した。しかし、彼女は科学者としての一面も持ち、新しい無線通信技術で特許を持っていた。実在したヘディー・ラマーの物語。
(ベストセラー2週目)


8.The New Iberia Blues

By James Lee Burke
Simon & Schuster

デイブ・ロビショー刑事と新しい相棒のベイリー・リボンズは十字架にかけられた若い女性の死体の事件の捜査を開始した。「デイブ・ロビショー」シリーズ22作目。
(ベストセラー2週目)


9.Every Breath

By Nicholas Sparks
Grand Central

36歳の看護師のホープ・アンダーソンは友人の結婚式に出席するため、休暇を取りノースカロライナのサンセット・ビーチにある家族の別荘で過ごすことにした。アフリカのジンバブエで生まれ育ったトゥルー・ウォールズはサファリのガイドをしていたが、父親を名乗る人物から突然手紙を受け取り、その人物に会いにサンセット・ビーチに来た。見知らぬ2人は偶然この海辺の町で出会い、急速に親密になっていった。しかし、家族に対する義務と自身の気持ちとの狭間で様々な難しい選択をした結果、1週間後に別れた。そして24年後……。
(ベストセラー14週目)


10.Nine Perfect Strangers

By Liane Moriarty
Flatiron

9人が人里離れた贅沢なスパリゾートで一緒になった。ロマンス小説家のフランセス・ウェルティをはじめ誰もがここで10日間過ごした後は、新しい自分になれると信じていたが……。
(ベストセラー7週目)


どちらかというと「地味」にロングセラ・セラーを続けていた(20週目)“Where the Crawdads Sing” が今週は1位に返り咲いている。この作品は今年1月になってから急速に売り上げを伸ばし、2週間前に18週目にして初めて1位になり、先週は2位だった。

そのほか“The Reckoning” 、“Fire and Blood” 、“Every Breath”、“Nine Perfect Strangers” が9週以上ベストセラー・リストにとどまっている。

今月は先週1位で初登場し、今週5位の“An Anonymous Girl”を取り上げたいと思う。

[1]“A version of this list appears in the February 3, 2019 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending January 19, 2019. Lists are published early online.” (このベストセラー・リストは2019年2月3日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2019年1月19日で終わる週の売り上げをもとに作成されている。)

◎編集者コラム◎ 『ロマンシエ』原田マハ
ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第5回