ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第5回
ちなみに税理士は夫の仕事関係から紹介してもらった。
私が何をやっているかは説明したくないのであまりしたくないのだが、渡す明細などに「カレー沢薫」と書かれている時点で、底辺ユーチューバーでもやっているのだと理解していただけていると思う。
詳しい話をしたくないので、税理士とのやり取りは最小限なのだが、税理士からは「節税しようにも、そもそも経費が少なすぎる」とよく言われる。
青色申告するだけでも節税効果はあるが、それよりさらに節税しようと思ったら、どれだけ控除額を上げるか、つまり経費を計上するか、である。
経費というのは、ある意味「これは経費だ」と言った者勝ちの世界であり「漫画家」というのは特にファジーである。
何故なら「熟女ローション相撲倶楽部」の領収書だって「取材」と言ってしまえばそこまでなのだ。特に私は「週刊漫画ゴラク」でも連載を持っているので説得力がありすぎる。
しかしこれが「放課後JKぶらりお○んぽ」という店だったら「ゴラクでJKはおかしいだろ、あの雑誌のヒロインは熟女か人妻しかいねえ」と言われる可能性がある。
いくら線引きが曖昧だからと言って何でも経費にすると、後から物言いがつき、謎の段ボールを抱えたスーツの集団が家庭訪問してくる事態になるのだ。
よって、出来るだけ文句のつけようがない経費を作るに越したことはない。
しかし、漫画家もひと昔に比べれば、かなりコストダウンしてきている。
まず、PC作業が増えたため、パソコンやソフト、ペンタブレットなどの初期設備費はいるものの、インクや紙という消耗品費がいらなくなった。
また、漫画家の経費の一番を占めるものは「人件費」、つまり「アシスタント代」である。
これも、PCにより作業効率が上がったため昔より人員を減らすことができ、また、わざわざ作家のところに行かなくても、ネットを使って自宅で仕事も出来るので、アシスタントの交通費や食費なども減少傾向だ。
だがそれでも、全部1人でやっている漫画家は少なく、未だにこの人件費は大きな経費になっているという。
中にはどう見てもアシスタントが500人いるとしか思えない人件費の上げ方をして、段ボールがやってきた作家もいるようだが、使った分はきちんと申告すべきだろう。