ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第53回
「編集者も意外と消える」
と覚えておいてほしい。
また「なかなか作家がメールなどの返事を寄越さない」ことにイラついている編集者も多いと思うが、「へんじがない、ただのしかばねのような編集者」もたまにいる。
この「返事が遅い編集」というのは、ある意味漫画家の返事が遅いより致命的な場合がある。
漫画というのは「ネーム」という「今回はこういう話で行く」という、ラフ画のようなものを担当に出し、それにOKが出てはじめて漫画家は作画に入れる。
つまり、これの返事が遅いと作画時間がどんどん減っていくのである。
その結果、間に合わないか、作画クオリティが異常に下がるし、最悪間に合わせるためにアシスタントを増員したりと、作家は経済的ダメージまで負うことになってしまう。
そして、待ちきれずに返事を待たずに作画に入ったら、そういう時に限って「全直し」になったりする。
あと担当作家が「原稿は締め切りを守るが、請求書出したら死ぬ病」という編集者も多いだろう。
打ち合わせから、原稿提出まで密にやり取りしていたはずなのに納品後「お疲れさまでした!つきましては請求書の方をお願いします!」と言った瞬間、行方をくらますのだ。
もちろん、請求書を出さなければ、原稿料が支払われず、困るのは作家側である。
よって、散々出版社の事務作業を滞らせた末に請求書を出す作家がほとんどだが、中には「支払いが1ヵ月遅れます」という脅しにも屈しない作家や「もう払えません」と言われても出さないという、徹頭徹尾作品を作ることにしか興味がない作家も稀に存在する。
それと同様に「作家と一緒に良い作品を作ることには情熱があるが、作家に原稿料を払うことには興味がない編集者」というのもたまにいる。
原稿を受け取った時点で仕事が終了してしまい、作家に「請求書を出してください」と伝えるのが「業務外」になってしまっているのだ。
そしてこちらが「あの原稿料どうなった?」と聞いてはじめて「請求書を出してください」と言われることがある。
仕事をしたら請求を出すのは当たり前だろうと思うかもしれないが、漫画業界というのは未だに見積や請求なしで金のやりとりをしているところが多い闇の仕事なため、言われなければ出さない作家も多いのだ。