ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第55回

ハクマン55回Clubhouseの登場で、再び
話題の「オンラインサロン」。
いったい何が行われているのか。

「月初の呼札を紙屑に変えた奴だけが集うサロンへようこそ」

これは一時期、私が月初めに必ずツイッターでつぶやいていた言葉である。
ソシャゲの「FGO」で、月初めに5回ほどガチャが無料でまわせるチケットが手に入る。
「そのチケットで何の成果も得られなかった奴だけでリッツパーティやろうぜ」という意味なのだが、そんなことはどうでもいい。

注目して欲しいのは「お前が紙屑と呼んでいるのは俺の推しなんだよ」という、低レアキャラ推しの憤怒、ではなく「サロン」の部分だ。

最近新SNSサービス「Clubhouse」が登場したことで再び「オンラインサロン」という言葉を聞くことが増えたし、前述の通り私もサロンという言葉を普通に使っている。

しかし「オンラインサロン」とは何か、具体的に説明しろと言われたら「映画のチケットを80枚買わされるところ」「見えないろくろを回すエア陶芸教室」という、偏見知識しかない。

まず「サロン」とは何かというと「談話室」という意味で、フランスでは貴族の社交界を「サロン」と呼んだそうだ。
よって「呼札を紙屑に変えた貴族の社交界」という意味になり、用法としては間違いではない。
サロンには「主人」がおり、おそらくデヴィ夫人みたいな人に「私(わたくし)の邸でお茶会を開くのでいらしてくれる?」と誘われた人のみが参加できたのだろう。
そして「デヴィ夫人(例え)のサロンに呼ばれる」というのが一種のステータスにもなっていたのではないだろうか。
確かに私もデヴィに誘われたら自慢するし、少なくともツイッターには書く。

近年問題となった、見えなさそうで見えるやっぱり見えない桜を見る会も実は桜はどうでもよく、その会に呼んだり呼ばれたりすること、もしくは桜の木の下で夫人自らが焼くBBQに大きな意味があったのかもしれない。

そして中には「サロンに呼ばれるように私がデヴィ(仮)に口利きをしてあげよう」という自称デヴィのマブダチに金品を渡してしまった貴族もいたかもしれない。

そして「オンラインサロン」とは「ネット上の会員制コミュニティ」のことである。

「ショタキャラの成長に寛容になりたい会」など、志を同じくする者が集まり、情報交換したり「死ぬな!ケータきゅんが帰ってきたぞ!」と励まし合ったりするコミュニティもあるが、リアルサロンのように中心人物となる「主人」がおり、主人の話を拝聴したり、主人の名の元に集まった者同士が交流したりするタイプもある。

オンラインサロンにも「招待制」や「紹介制」があるのかもしれないが「いつかデヴィから声かかるように哲郎みを高める」というような努力をしなくてもシンプルに「会費さえ払えば入れる」というものが多い。

よってオンラインサロンは会費目的の「信者ビジネス」であるとも言われている。

 
 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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