ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第55回

ハクマン55回Clubhouseの登場で、再び
話題の「オンラインサロン」。
いったい何が行われているのか。

実は私もfanboxはやっているのだが「締め切りが存在しない漫画やイラストを定期的にアップなんてできるわけがねえ」ということはわかりきっており、実際最初は何かしらアップしていたのだが、最近は完全に沈黙している。
よって最初に「課金に対する見返りは特にない。ただ俺というドブに金を捨てたい人だけ利用してくれ」と言っていたのだが、それでも支援してくれる人がゼロではないのだ。

つまり、締め切りがなくとも定期的に漫画をアップすることができれば、もっと会員を増やすことは可能だろう。
さらに商業誌で「100人しか買ってない」というのは大ごとだが、会員制サービスだと作家本人の懐に入る利率が高いため「100人会費を払ってくれる」だけでそれなりの収入になったりするのだ。
もちろん商業誌のように描けば原稿料がもらえるというわけではないので、赤字の場合もあるが「打ち切り」もないので、出版社の都合に振り回されることなく全てを作家がコントロールできるという利点もある。

このように最近は100万部売るのではなく、100人の物好きや変態相手に利率の高い商売をするという漫画のビジネスモデルも生まれつつある。

しかし「変態を100人集める」つまり「100人の変態を満足させる」というのも決して簡単なわけではない。ただ商売の仕方が増えたというだけで「チョロくなった」というわけでは全くない。

私も仕事を依頼してくれるところがある内は良いが、それがなくなった時はこういったサービスを本格的に利用する可能性があるので、あまり有料会員制については悪く言えない。

ただ「特に何も返さないが、小銭を下さい」という私には、50円玉の代わりにでか目の石を投げて良いが「会費を払ってくれた人だけに漫画を見せます」という作家に「金儲けに走るな」というのはやめてほしい。

最近無料のWEB漫画が増え「漫画はタダで読めるもの」という意識になっているかもしれないが、あれも広告料など別の部分で金が発生しているからやれることなのだ。

商業であれば「漫画は金を払って読む」が当たり前なのだ。
そして作家も飯を食わずに漫画を描くのは無理だ。漫画の続きが読みたければ「作家の米代を払う」ことも忘れないで欲しい。

(つづく)

 
 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『刑事の遺品』三羽省吾
『自転しながら公転する』山本文緒/著▷「2021年本屋大賞」ノミネート作を担当編集者が全力PR