ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第56回
今、漫画を売るには
「きっかけ」が必要である。
「漫画家コラム」と銘打ちながら漫画家として特にニュースがないまま連載も50回を超えてしまった。
「なんの成果も出さぬまま愚痴だけ重ねて年だけ取った」という人生の縮図のような連載だ。見るだけで運気と免疫力が下がるので乳幼児と高齢者は近づけないほうがいい。
だが最近、珍しくというか「はじめて」のレベルで漫画家としてホットなニュースがあった。ちなみにクールなニュースなら事欠かない。もちろん「イケてる」ではなく「寒い」という意味でのクールだ。
全くの他社作品ではあるが、私の漫画が「文化庁メディア芸術祭」の漫画部門で優秀賞を取ったのだ。
ちなみに受賞したのは、ここでも「コロナのせい(という設定)で打ち切られる」と騒いでいた作品なので、V字回復と言っても良いだろう。
今後「W」や「実はMだった」にならないことを祈る。
私はデビュー前にほぼ誰もが取るという新人賞すら取らずに「落選」からデビューしたので、漫画で賞を取るというのは実質はじめてである。
さらに「文化庁」というのが「ふみばけてい」という謎の組織でなければ、お国の賞ということだ。
そんなわけで、受賞が発表されてから早10日以上は経つのだが、毎日そのことを言っているし、おそらく死ぬまで言い続けるだろう。私を介護する介護士が今から不憫なので、己の耳か私の口に綿を詰めることを許可したい。
平素は国に対して、「不平」と「不満」「給付金おかわり」の三語しか発してないのに、いざ賞をもらったら大喜び、などというのは権威に弱すぎると思うかもしれない。
しかし私だって国に税金を払っているのである。
税金をろくに払っていない奴ほど「税金を払っている」ということを主張したがるとはよく言うが、額の問題ではなく私は税金支出割合が異常に高いのだ。
去年など「支出の95%が税金」というグロ円グラフが爆誕してしまった。
最も金をつぎ込んでいるものがその人間にとっての「推し」と定義するなら私の最推しは圧倒的に「国」だし、かなりの強火である。
つまり今回の受賞は「賞をいただいた」ではなく「国がやっと俺にファンサを返してきやがった」と解釈している。
ちなみに約10年前にも同じ賞の推薦作品に選ばれているのでもはや「俺を相手にしてくれるのは国だけ」と言っても過言ではないのだが、もちろん他に相手にしてくれる賞は常時募集中だ。
しかし、漫画の賞も数が多く、有名な賞の上位でなければなかなか実売には結びつかないとも言われている。