ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第60回
連載の打ち切りが決まった。
何回されても痛さは
変わらないが、回復は早くなる。
何回されても痛さは
変わらないが、回復は早くなる。
何がとはまだ言えないが、漫画が一つ連載終了することが決まった。
理由は一点の曇りもない打ち切りなのだが、実は編集者サイドは「打ち切り」という言葉は使わない。「切り替え」や「区切り」と言ったりする。
できちゃった婚を授かり婚と言うのと同じで、正直苦しいのだが、その言葉を使うことで殺傷事件を起こさずに済んでいる新婦の父親だっているはずだ。
事実上打ち切りであっても、作家の心を折らない言い方は大事である。もし担当が「打ち切り」という言葉を使ってきたら「出来るだけ再起に時間がかかってほしい」という思いが込められていると思った方がいい。
作家は意外と担当の「見限っている空気」に敏感である。例え編集部内で「うちのサイトのギガ数の無駄だから早く終わらせよう」というやりとりがあったとしても、それをそのまま作家に伝えてはならない。
せめて「もうちょっと有効なギガの使い方を一緒に考えましょう」ぐらいにしておくべきだ。つまり連載はこれで終わりだが、作家としてはまだまだ先がある、と思わせるのが大事なのだ。
それにもかかわらず、昔編集長とのやりとりメールをそのまま私にCCで送ってきてしまった担当がいた。
そのメールには「正直全然売れてない。これがダメならカレー沢さんはもう漫画家として終わりだと思う」という編集長の言葉がつづられていた。
さらに良く見ると、CCには全く無関係の外部機関やデザイナーの人のアドレスも入っていた。
おそらくこの時本当に担当を殺してしまっても執行猶予ぐらいは勝ち取れたのではないかと思う。
もし今売れていたら、ことあるごとにこの件を持ちだして「おかげさまで終わりませんでした(笑)」で締めたいところだが、未だに終わってはいないが、はじまってもない、という異次元キッズリターンが抜け出せていない。