ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第68回
「副作用が起きないことに
ワンチャン賭ける」作戦でいく。
最近は、それを与えずに「あれをやれ」と要請し「できねえよ、無茶言うな」とキレられ「何故できないんだ、やれ」というケンカになってしまっている気がする。
できないものはできないし、できないことをやろうとしたら最悪命を削ることになる。
大事なのはできないことをやらせようとするのではなく、どうやったらできるのか、そしてやれと言う方が、できる条件を与えることである。
私としては世間に出版社は悪の組織、担当は使い魔で触手が生えているという誤解をしてほしいのだが、あえて誤解がないように言えば、副反応などの体調不良で休ませてくれと言って休ませない出版社はないと思う。
しかし、作家の方が休ませてくれと言わない場合もあるのだ。
口に触手を突っ込まれていて物理的に言えないというのもあるが「休み方がわからない」というのもある。
会社であれば、休みたい時は何日前までに休暇申請を出す、辞めたい時は課長部長社長の順にぶん殴っていくなど、休むにしても辞めるにしても「手順」というものが決められている場合が多い。
しかし、執筆業の場合、連載開始時に「休みたい時はこうしてくれ」と手順を示されることはほとんどないのである。
「連載半年経過で有給が発生する」ということもないし、休みたい時は言ってくれと言われても、いつまでに言えばいいのかもわからないのだ。
漫画業界は未だに請求書や連載開始時の契約書がなかったりと普通では考えられないことも多く、逆にそのおかげで事務仕事が死んでもできない作家が死なずに済んでいると言えるが、連載を休みたい時の手順やマニュアルは作成した方が良いのではないかと思う。
そうすれば「突然ぶっ倒れる」という形で休みを申請してくる作家も減るのではないだろうか。
現在ワクチンを打ってから5時間は経過しているが、今のところ副反応はない。
そもそもなぜワクチンを打ってすぐ、原稿という重労働をしているかというと、まさにこの原稿が締め切りを過ぎているからだ。
副反応が出たら「ワクチンの副反応で死んでました」という担当がよく送ってくるメールを原稿の代わりに送ってやろうと思っていたがそれもできないまま終わってしまった。
来月の追いワクチンに期待である。
(つづく)