自著を語る

◇自著を語る◇ 夢枕 獏 『ぐん太』
『ぐん太のこと』 『ぐん太』は、作家になってから、三十五年あまり、ずっと心の中で温めてきた物語です。いつか、絵本というかたちで世に出したいと思い続けてきました。そもそものことで言えば、五十年ほど前、二十歳の大学生の時に、一冊の絵本と出会ったのがきっかけです。タイトルは『八郎』。斎藤隆介作、滝平二郎画の、素晴らしい絵本です。
 この度、はじめて文庫で本を出版させていただきました。単行本は、これまでも、何度か出版した経験がありましたが、文庫となると、また違う嬉しさがありました。私は、一九九八年に神保町の古本屋に就職したので、その後の茅場町、今の銀座と、かれこれ二十三年のあいだ、本を販売する仕事をしています。また本書にも書いた通り、それ以前も、
風野さん アイキャッチ画像
 あの名作があることは、もちろん当人も重々承知のうえでして、周囲からも言われましたよ、「坂本龍馬? いまさら書くことあるの?」と。しかも、その背後に「お前ごときちんぴら作家が?」と言いたい気持ちをあり
《自著を語る》谷川俊太郎『音楽の肖像』
 谷川俊太郎という名前を知っている人はいると思うが、堀内誠一という名前を見て彼の描いた画やデザインした文字を思い浮かべる人は、今やそうたくさんはいないだろう。私より一年と五日年下のくせに(同じ射手座)
◇自著を語る◇ 中澤日菜子『働く女子に明日は来る!』
 約三か月間にわたって放送される連続テレビドラマ。本作品は、そんなテレビドラマが出来上がるまでの奮闘ぶりを、制作会社のアシスタントプロデューサーである三十一歳の女性の目線で追った小説である。
◇自著を語る◇  五條 瑛『パーフェクト・クオーツ 北の水晶』
『パーフェクト・クオーツ 北の水晶』は、在日米軍のHUMINT担当の情報分析官を主人公とするシリーズものの諜報小説の中の一作だ。このシリーズはすべてタイトルに鉱物の名称を使っているために一部の人たちの
◇自著を語る◇  はらだみずき『海が見える家 それから』
 小説の最後のページのその先は、本来、読者に委ねるべきもの。僕も同じ意見ですが、時にそれは言い訳のように聞こえる場合もあります。その先、続きを書くことは、それが予定されていない場合、かなり勇気のいる作
◇自著を語る◇  山本甲士『つめ』
 拙著の中に〔巻き込まれ型小説〕という名称でくくられている作品がある。  最初は二十年ほど前に書いた『どろ』という、隣人トラブルがエスカレートしてゆく話だった。結果的にあまり売れず、文庫化された後でち
◇自著を語る◇  榎本憲男『DASPA 吉良大介』
 執筆に際して僕が念じているのは、小説とはまずは面白いお話でなければならないというテーゼです。  都内のマンションでアメリカ人のプログラマーが毒殺される。その手口から外国の関与が見えてきて、さらにテロ
◇自著を語る◇  石井光太『赤ちゃんをわが子として育てる方を求む』
「宮城県石巻市の遊郭で育った一人の産婦人科医がいた。彼は中絶手術に嫌気が差し、出産させた上で赤ちゃんを不妊の夫婦にあげる斡旋をはじめた。そしてその事実を公表した上で、国や医師会を敵に回して闘い、勝ち取
◇自著を語る◇  内田洋子『サルデーニャの蜜蜂』
 二〇一七年の秋、東京で『本の窓』の連載の打ち合わせのために編集者と会っていた。  ちょうどその時期、私はイタリアの山奥での取材の真っ只中にいた。テーマが多岐にわたる上に、舞台となる時代も古代から現代
◇自著を語る◇  福澤徹三『羊の国のイリヤ』
 これを書いているのは二〇二〇年四月二十一日、世界は新型コロナウイルスによる混乱の真っ只中にある。インフルエンザの十倍といわれる致死率に加え、感染予防のための行動自粛が経済を蝕み、恐怖と不安が渦巻いて
◇自著を語る◇  上田秀人『勘定侍 柳生真剣勝負〈一〉 召喚』
 時代は繰り返す。あるいは歴史は繰り返すとよく言われる。  平和は次の戦争までの猶予でしかないといううがった見方もできるという。それだけ人は争いを繰り返してきたのだ。  一六一五年、大坂夏の陣をもって
◇自著を語る◇  柳 広司『太平洋食堂』
 何年か前、ある編集者からこんなことを言われた。  ──柳さんは政治的なことを書かれるので、うちでは書いて頂けません。  二十一世紀の、日本国内での話である。  今回上梓した『太平洋食堂』は、明治政府
◇自著を語る◇  角幡唯介『エベレストには登らない』
 心のなかに無をかかえるのは凡人には不可能である。何十年にもわたる修練のすえに煩悩を克服し、解脱して悟りを開いたものにしか無の境地はひらかれない。したがって九十九・九九パーセントの人はつねに何かを考え
◇自著を語る◇  鈴木るりか『太陽はひとりぼっち』
 映画でも小説でも、エンドロールが流れたあと、本を閉じたあとに、その中に出てきた人たちの人生がその後も続いているように感じられる作品に惹かれる。  デビュー作『さよなら、田中さん』をお読みいただいた方
◇自著を語る◇  森沢明夫『ぷくぷく』
 誰の人生にも「壁」は付きものです。  しかも、その「壁」の種類は色々で、努力をすれば越えられる「壁」もあれば、あまりにも高すぎて、もはや絶望すら抱かせるような「壁」もあります。  最もよくある身近な
◇自著を語る◇  中澤日菜子『お願いおむらいす』
 とある秋の一日、東京郊外の公園で開かれた〈ぐるめフェスタ〉、そこに集うさまざまなひとびと──出店者や運営事務局員、ステージでライブをするアイドル歌手、そして偶然訪れた父と娘たちを通して、彼らの人生の