スピリチュアル探偵 第15回
かえってきた探偵の前に、
パワーワード満載の霊能者、降臨!
恒例(?)のオーラガチャ。今回は「青」でした
「お仕事、自営業と書かれてますけど、具体的にはどんなことをされているんですか?」「フリーライターです。雑誌に記事を書いたり、本を書いたりしています」「へえ、それは素敵。もう長いんですか?」「もう少しで20年選手ですね」
そんな感じで、まずは職業にリサーチが入るのはいつものこと。こちらからすれば霊能者ほど変わった職業はないと思うのですが、物珍しいのはお互い様のようです。
Tさんは柔らかな物腰で逆質問をしながらも、僕の目から視線をはずしません。あるいは僕の目ではなく、何かオーラ的なものを視ているのかもしれませんが、よくわかりません。
「ただ、そろそろいいトシになってきたので、このまま今の仕事を続けていて大丈夫なのか、たまに不安になるんですよね……。どう思いますか?」
ここで、あえて少し弱気な口調で探りを入れてみる僕。しかしTさんは意に介しません。
「大丈夫ですよ。あなたは感性の豊かな人だから、状況によって少し心配しすぎちゃうことがあるみたいだけど、何かものを作ったり、表現したりする仕事にはすごく向いている色をしているから」「色? ええと、それはオーラみたいなものですか?」
僕の質問ににっこりと頷くTさんに対し、なるほどオーラが視える系能力者なのですね、と察する僕。
「オーラで適職がわかるものなんですね」「もちろん。その人の持って生まれた性格や属性なんか、色を見れば一発ですよ」「ちなみに僕の場合、他にどんな仕事が向いているんでしょうか?」「表現を伴うものは全般的に合っていると思いますよ。営業職や接客業みたいに、人と接するお仕事はまず大丈夫だし、わりと機転が利くタイプだからコメンテーターみたいな仕事だってやれるはず」「僕のオーラ、何色なんですか?」「青に近いかな」
これまで何人かの自称霊能者たちにオーラを視てもらったことがありますが、青と言われたのはたぶん初めて。たいていオレンジと言われるので、なんだかガチャでレア物を引き当てた気分です。
余談ですが、ものの本で調べてみたところ、オレンジはフリーランスに向いているカラーなのだそう。要するに、どいつもこいつも僕の職業から逆算してオレンジと言っていたのかよ、とバカバカしくなったものです。
ふと蘇る、過去に指摘された前世の職業
ここでおもむろに、Tさんの表情が「ニコニコ」から「クスクス」に変わりました。
「……どうかされました?」「いえね、あなたのオーラ、IKKOさんと同じ色なんです」「は、はあ」「あ、でも誤解しないで。つまりは才気に溢れてるってことだから、悪いことじゃないんですよ」
リアクションに困りながら、彼が出演しているというお昼の番組に、IKKOさんもよく登場していることを思い出した僕。こうした著名人との接点の匂わせは、きっと若い女性には喜ばれるのでしょうね。
友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。