スピリチュアル探偵 第9回

スピリチュアル探偵 第9回
かわいい!!
オーラが見えたりチャクラを開いたりできる?
アニメ声のエンジェル登場!


天使ちゃんは天使の下請け業者だった!?

 なんだか密室で悪い宗教の勧誘を受けているような気分になってきたので、話題を変えることにします。

「先生はいつからそうやって天使のお仕事を手伝ってるんですか?」
「厳密には言いにくいですね。生まれたときから何かのかたちでは関わり続けているので」
「じゃあ、実際に天使の人とお話しされたことも?」

 もちろん、と言いたげに無言でうなずく天使ちゃん。

「どんなふうに指示が来るんですか。テレパシーみたいなやつ?」
「そうですね、そういうイメージでいいと思います。私は〝天使の使い〟なので、時間軸とは関係なく常に何かを受け取っています」

 〝天使の使い〟という「頭痛が痛い」みたいな表現にじわじわくるものを感じながらも、真面目な表情を保つ僕。要は孫請け、ひ孫請けの業者が天界にもいるわけですな。

 ともあれ、カウンセリング開始からはや30分。天使ちゃんというより不思議ちゃん色が強くなってきたので、さっさとオーラを診てもらうことにしましょう。

「そろそろオーラのほうをひとつ」と切り出すと、天使ちゃんは同じ部屋の片隅に置かれている、別の椅子に移動するよう僕に言いました。やはり白いテーブルチェアが部屋の角に向かってぽつり。椅子の前は壁ですが、小さな鏡がセットされています。

「では、しばらく心を落ち着けて目をつぶっていてくださいね」

 言われるがまま、少し深めの呼吸をしながら目を閉じる僕。見えてないので細かいことはわかりませんが、天使ちゃんは何やらぶつぶつ言いながら、たまに僕の肩のあたりをスッスッと指でなでてきます。

 うら若き女性の部屋でいったい何をやっているのかという気もしますが、時間にしておそらく5分程度。天使ちゃんの「──はい、ではゆっくり目を開けてください」の声に従い、僕は目の前の鏡に目をやりました。ちょっとシラけた表情の自分の顔がうつっています。

ようやく診てもらった僕のオーラは……

 その後、再びソファのほうに戻されてから、あらためてオーラ診断の結果説明が始まりました。てっきり何色だからどうと言われるものだと思っていたら、天使ちゃんの言葉はここでも予想の斜め上。

「友清さんのオーラは、簡単にいうとウリエルとガブリエルが半々といったバランスなんです」
「え、ウリエル? ガブリエル?」

 いや、ウリエルはさっきも出てきた気が……。そうだ、大天使の名前でしたっけ。

「大天使ウリエルは美と創造性を司り、大天使ガブリエルは喜びや対話を司っています。このオーラからすると、今のお仕事はまさに天職と言って良さそうですよね」

 そう言われて悪い気はしないものの、「はあ」としか返せない僕。天使ちゃんはその後も、ウリエルとガブリエルについて長々と語ってくれましたが、まったく興味のないファンタジー小説を読み聞かせられているようで、正直ほとんど記憶に残らず。

 最後に彼女は、僕がこの仕事でさらに良い方向へ進むためには、2人の大天使に感謝を捧げ、心の中で祈り続けることだとアドバイスをくれました。

 時計を見れば、スタートからちょうど60分に達したところ。とりあえず時間いっぱい、お腹いっぱい。本物の天使に会えなくて残念でしたが、退散することにいたしましょう。

 帰りがけ、靴を履きながら下駄箱の上にちらりと出雲大社の御札が見えました。さっきまで聞いていた設定からすると、いかにも場違いな代物に見え、思わず「こういうの祀るんですね」とぽろり。すると、天使ちゃんはなんだか居心地悪そうにはにかみながら言いました。

「昨年のものなので、返しに行かなければいけないんですけど、時間がなくてつい……。今年はまだ初詣にも行けてないんですよー」

 天使の使いなのに、初詣にも行くんだ……。おまけに出雲大社といえば縁結びの神様です。カウンセリングタイムが終了して気を抜いたのか、急に女の子らしいプライベート感が漂い始めた天使ちゃん。

 とても本物認定はできませんが、その様子に「可愛いから許す!」と心の中で告げて、僕はマンションを後にしたのでした。

(つづく)

 


「スピリチュアル探偵」アーカイヴ

友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

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