辻堂ゆめ「辻堂ホームズ子育て事件簿」第8回「夫婦は仕事のパートナー」

辻堂ホームズ子育て事件簿
第2子の臨月を迎える著者。
大量にある家庭のタスクを
夫婦でこなす秘訣は……。

 2021年10月×日

 第2子の出産予定日が、約1か月後に迫っている。

 妊娠の経過は大変順調だ。だけどお腹の中の胎児は、毎日命の危機にさらされている(矛盾)。──というのも。

 娘が、私の膨らんだお腹の上に乗るのにハマっている……。

 つわりに悩まされた妊娠初期から、この問題にはとても気を使っていた。体調が悪いし疲れやすいからしょっちゅうソファやカーペットに寝転んでしまうのだけれど、1歳の娘は私とじゃれ合いたい盛りなので、頭だろうが太腿だろうがお腹だろうが、お構いなしに腰かけてくる。となると、仰向けに寝るのはあまりに危険だ。そこで横向きの姿勢を取ることにした。

 つい最近まで、この対策は上手くいっていた。脇腹になら、万が一乗られてもさほどダメージはないからだ。

 しかし、妊娠後期になると、お腹がぐんと前にせり出してくる。その結果、むしろ私が横向きに寝ていると、娘が腰かけるのにちょうどおあつらえ向きな〝ベンチ〟ができあがるようになってしまった。

 そこに娘が嬉々として座る。テレビでEテレが流れているとさらに厄介で、お気に入りの曲が始まった瞬間、大興奮でスクワットを始めてお尻で跳びはね出す。痛い。怖い。危ない。もちろんすぐに娘を引き剥がすのだけれど、たぶんお腹の子は毎度びっくりしているだろう。教えてください、世の中の第2子以降妊娠中のお母様方は、この困難をどうやって乗り切っているのですか……?

 ちなみに娘、このあいだ私が夫に子守を任せて寝室でお昼寝をしているときに、最初は大人しく夫に寄りかかって一緒にテレビを見ていたそうなのだけれど、途中ではっとした顔をして夫のぺったんこのお腹を思い切りひっぱたき、泣きながら廊下に走り出て私を探し始めたらしい。「お腹の膨らみ具合で懐く相手を判別してるのかよ……」とは、呆れた夫の言葉。

 とまあ、そんなわけで早くも臨月を迎えようとしている今、ちょっぴりタイムリーな話をしようと思う。

 家庭のタスク管理について、だ。

 すでにお子さんがいる方は経験済みだろうけれど、出産前後というのはとにかくやることが多い。新生児育児に備えて新しく買わなければならないものもたくさんあるし、出生届をはじめとした役所等への申請手続きも山ほどこなさねばならないし、産後に出産祝いをいただいたら内祝いをお返しする必要も出てくる。それだけではない。2週間健診や1か月健診を皮切りに、数か月ごとに乳幼児健診があるし、予防接種も次から次へと受けさせなくてはならない。何か一つでも忘れると、自分たちが不便をしたり、後のスケジュールが狂ったり、周りの方に不義理をしたり、子どもの体調に影響が出たりすることになる。


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辻堂ゆめ(つじどう・ゆめ)

1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。2021年『十の輪をくぐる』が第42回吉川英治文学新人賞候補となる。他の著作に『コーイチは、高く飛んだ』『悪女の品格』『僕と彼女の左手』『卒業タイムリミット』『あの日の交換日記』『トリカゴ』など多数。

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