辻堂ゆめ「辻堂ホームズ子育て事件簿」第9回

辻堂ホームズ子育て事件簿
ついに第2子誕生!
スムーズだった分娩の裏で
事件が続発!?

 2021年11月×日

 今日は、第2子の出産予定日だ。

 その第2子は、予定日2日前に生まれた。つまり今、私は生後2日目の息子とともに入院している(「生まれました!」と喜びいっぱいに報告するのもなんだか気恥ずかしく、紛らわしい書き方をしてしまい、すみません)。

 経産婦というのはすごいもので、朝9時半に本格的な陣痛が始まり、昼に入院、15時に出産というスーパー安産だった。出産による身体のダメージはよく交通事故に喩えられるけれど、初産が時速60kmの乗用車に撥ねられたくらいだとすれば、今回は時速30kmの原チャリくらいだろうか。もちろん出産する瞬間の痛みは変わらないものの(想像を絶しすぎていて、毎回もう二度と経験したくないと思う)、分娩時間が約3分の1になったぶん、後に残る筋肉痛やら傷の痛みやらが圧倒的に楽だ。……本当に楽だ。今になって、2年前にあの壮絶な初産を乗り切った自分を褒めてあげたくなる。人生、比較して初めて分かることというのもあるのだなぁ。

 そんなわけで、出産後2日にして早くも仕事復帰している。

 といっても、今回は産前の里帰り中には執筆を封印していたし、このエッセイを書き終わったら少なくとも月末までは仕事をお休みするつもりなので、〝自主的産休〟の長さは前回の7倍くらいだ。5日×7=35日。作家のような変則的な職業の女性にとって、これが長いか短いかはよく分からない。

 月に1度やってくるこの子育てエッセイの締切日は、産前の里帰り中から、頭の片隅にはあった。本来なら11月に入った瞬間に書いて提出してしまうのが賢明だったのだろうけれど、今月はせっかく大イベントが待ち構えているしなぁ……と、あえて出産が終わっているであろう締切日ギリギリに原稿を書くことにした。すべて私自身の勝手な選択だ。決して小学館の担当者が鬼で、〆切の融通を利かせてくれなかった……とかではないので、読者の皆様はどうか誤解されませんよう!

 さて、今回の出産、分娩そのものはスムーズだったものの、ある意味では事件続きだった。

 

〜その1:夫のスマホ水没〜

 妊娠37週、里帰り2日目。実家で娘と戯れていると、新卒で入社した会社の元同期男子から、突然ラインのメッセージが届いた。

『おひさー! (辻堂夫)さんとキャンプにいるけど、(辻堂夫)さんの携帯水没したから、夕方ごろまで連絡つきません!笑 何かあれば、解散するまではおれ宛に連絡頂ければと!』


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辻堂ゆめ(つじどう・ゆめ)

1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。2021年『十の輪をくぐる』が第42回吉川英治文学新人賞候補となる。他の著作に『コーイチは、高く飛んだ』『悪女の品格』『僕と彼女の左手』『卒業タイムリミット』『あの日の交換日記』『トリカゴ』など多数。

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