辻堂ゆめ「辻堂ホームズ子育て事件簿」第9回「第2子誕生」

辻堂ホームズ子育て事件簿
ついに第2子誕生!
スムーズだった分娩の裏で
事件が続発!?

 特に絵本に関しては、同じ絵本を5回も10回も読まされ続けた母がさすがに疲弊しつつあるのを見かねて、私が読んであげると申し出ても、おばあちゃんの熟練した読み聞かせを気に入ったのか、特定の絵本以外はこちらに渡してこようともしない。恐るべきおばあちゃんの求心力。

 なんというか、母親としての尊厳を失ったような気がする里帰り期間であった。

 

〜その3:回旋異常〜

 前述したとおり、お産自体は大変スムーズに終わったのだけれど、産後2時間ほど経って「そういえば!」と助産師さんに思い出したように言われた。

「今回、赤ちゃんが逆を向いて出てきたんですよ。回旋異常といって、お産が停滞してしまうことも多いんですけど、ちゃんと進んでよかったです」

 どうやら、本来は母体の背中側を向いて産まれてくるはずの赤ちゃんが、身体をひねりきらずに、母体のお腹側を向いてそのまま出てきたらしい。前後逆だった、ということだ。そういえばお産のラストスパートのところで助産師さんに促されて上半身を丸めたら、出てくる途中の赤ちゃんと目が合ったのだけれど、あれは普通なら起こりえないことだったのか。

 回旋異常という名がついているにもかかわらず安産だったこと、そしてめったにできない経験が叶ったことに感謝したい。

 

〜その4:違いすぎる出生体重〜

 息子は予定日2日前に2758gで生まれた。一方、予定日前日に誕生した娘は3100gを超えていた。同じ母体から産まれているのに、この400gの差は何だろう。私は医者ではないから、このエッセイ内で答えは出ないのだけれど、回旋異常と並んでこれも生命の神秘だなぁ、謎だなぁと感じたので記録しておく。

 ちなみに出産直後、息子の体重を知らされた夫が、「2758で四則演算して10を作って! はい! 簡単だねーっ!」などとハイテンションに無茶ぶりをしてきた。「こら、出産直後の母親に頭の体操をさせない!」とそのときは一蹴したけれど、このエッセイを書きながら改めて気になり、長々と考えてしまった。これ、数字の並び替えが不可なら無理ですよね……? まったくもう、あのタイミングで答えがないなぞなぞを出すんじゃない!

 ――と、いうわけで、いろいろな小事件(?)を乗り越え、私もこれからは2人の乳幼児の親。このエッセイ連載もますます話題が増えるのを楽しみに、ひとまず身体を休めようと思います。

 第1子の入院のお伴は母が差し入れてくれた『プリズンホテル』(浅田次郎)全4巻だったけれど、今回は自分でチョイスした『沈まぬ太陽』(山崎豊子)全5巻。さて、入院中にどこまで読めるかな?

(つづく)


*辻堂ゆめの本*
\第42回吉川英治文学新人賞ノミネート/
十の輪をくぐる
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辻堂ゆめ(つじどう・ゆめ)

1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。2021年『十の輪をくぐる』が第42回吉川英治文学新人賞候補となる。他の著作に『コーイチは、高く飛んだ』『悪女の品格』『僕と彼女の左手』『卒業タイムリミット』『あの日の交換日記』『トリカゴ』など多数。

河﨑秋子『絞め殺しの樹』
誰より本が好きだからこそ。「本屋さんによるエッセイ」のおすすめ5選