けんご@小説紹介さん インタビュー連載「私の本」vol.16 第3回

けんご@小説紹介さん

小説のおかげでより多くの人と出会い、小説に感謝していると語るけんごさん。長引くコロナ禍のいまだからこそSNSにできる役割、そして今後の抱負などについて伺いました。なにより小説を大切にしていることが、言葉のはしばしから伝わってきます。


SNSで小説に恩返しをしたい

 僕はいま会社員として働きながら、TikTok の活動をしています。TikTok はあくまで個人的に小説を紹介する場であって、収入源にはしていないんですね。

 じつは大学4年のときに、有名な上場企業に営業職で採用してもらったのですが、内定者研修をしたら自分には向いていないと気づいてしまって。4年生の7月の時点で内定を辞退したんです。そんなこともあって、いまは就活の際にお世話になった方の小さな会社で働かせてもらっています。

 SNSはあくまで趣味なので、再生回数より紹介した本が重版になるかどうかのほうを大事にしています。僕自身のいまの状況は小説がなければ成り立たないので、それにより恩返しできればという思いがあるからです。

作家との交流が、大きな刺激に

 活動のおかげで、最近は様々な方と交流させていただく機会も増えました。大好きな作家さんである綾崎隼さんとは、ずっとDMなどを通してやり取りさせていただいていたんです。綾崎さんのご著書の帯に、僕の推薦コメントを使っていただいたりもして。しかも今度、ポプラ社さん主催のイベントでご一緒することになりまして、緊張するけれど、実際にお会いできるのをすごく楽しみにしています。

 YouTube で酒テロ動画を配信している酒村ゆっけ、さんも自分が SNS を始める前から知っていて、ファンでした。いまは一緒にお食事させていただくこともあります。すごく才能のある方なので、いろいろな意味で刺激を受けています。

 そういう様々な方と知り合うなかで、野球の経験が役に立っているなと感じることもあります。そのひとつが、コミュニケーション力です。指導者やチームメートと会話して、きちんと関係性を構築するというのが大事な要素だったので、それがいまの活動にも生きているな、とは思いますね。

 最近は、僕自身もいろいろなメディアで取り上げていただくことが多くなったので、元野球部の仲間からは「すごいね」とびっくりされます。でもその一方で、「何かやりそうだと思ってたよ」と言われることもありますね。

コロナ禍では、新人作家に光をあてたい

 いまは月に20冊くらいは本を読んでいます。朝1時間と、電車に乗っているときや寝る前といったすきま時間が多いです。

 今後、紹介したいと思っている本はもう無限にあって。僕が小説を読むきっかけになった東野圭吾さんの『白夜行』や宮部みゆきさんの『火車』、やはり好きなアガサ・クリスティの『アクロイド殺し』もなかなか脚本が書けず、まだ紹介できていない状態です。何回かチャレンジはしましたが、まだ厳しいかなという感じで。

 現在のコロナ禍という状況も、SNSをやるうえではかなり意識しています。不要不急の外出を避けるようにと要請された時期が長くて、本屋に行けない人も多かったと思うので、今年の春ごろからはなるべく新作を紹介したいと考えるようになりました。

 まだ有名な作家さんはいいですけれど、たとえば新人で、素晴らしい作品なのに人々の手に届かないというのは、すごくもったいないことだと思うので。コロナ禍だからこそ、より頑張って紹介したいんですね。

小説は100年後も、決して古びない

 TikTok の活動は少しでも長くやれればと願ってはいますが、その一方でSNS社会は流行り廃りが早いというのも理解しています。いつ自分の視聴数が伸びなくなってもおかしくない。だから今日、あるいは明日紹介する作品がこれで最後なんだ、という気持ちはつねに持ち続けるようにしています。

 それでも継続していけるようであれば、今後は毎年僕がトップ10を選ぶ「けんご大賞」なども創設したいですね。これまでは読む側でしたが、小説を書くことにも挑戦したみたいと考えています。

 なにより小説はすごく面白いものですし、たとえ時代が変わっても、100年後の未来でも、その魅力は決して衰えないと個人的には思います。その小説に関わっていけることが、いま現在の自分にとってはとても楽しいのです。

(貴重なお話はこれで終わりです)
(取材・構成/鳥海美奈子 写真/浅野 剛)

けんご@小説紹介
小説紹介クリエイター。TikTokやInstagramなどSNSを中心に活動中。

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