酒村ゆっけ、さん インタビュー連載「私の本」vol.15 第1回

酒村ゆっけ、「私の本」

「おっはモーニング」という、ゆるめの言葉で始まる酒村ゆっけ、さんの YouTube チャンネル「世界一のゆっけ」は1年足らずで40万人もの登録者数を獲得。お酒に浸る「ネオ無職」な生活を、酒テロ動画にして投稿している。2021年3月に初エッセイ『無職、ときどきハイボール』(ダイヤモンド社)、8月に初小説『酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす』(KADOKAWA)を発刊するなど今話題のクリエイターに迫ります。


お酒は人見知りな自分のコミュニケーションツール

とても有難いことに、SNSは初めからかなり反応が良かったんです。一般の方はもちろんクリエイターの方たちも、拡散してくださったこともあって。私は飽き性なところがあるんですが、おかげさまで、無事ここまで続けることができました。

SNSは、大学卒業後に入社した映画会社をわずか半年で辞めたあと、なにもやることがないし、お酒を飲んでまったりと日々を過ごすのも悪くないけれど、なにか発信できればなって思って始めたんです。

もともとお酒を飲むようになった入り口は、内気で人見知りな自分でもお酒でほろ酔いになると、人とスムーズに喋れるというのを発見したこと。まずはコミュニケーションツールとして使い始めたんです。

角田光代さんの恋愛小説『愛がなんだ』に、まさに私の気持ちを表してくれている共感フレーズがあるんですよ。

酔っぱらうと気まずさも消えたかに思え、ああ、この状態になるために私たちはがんばって飲み続けているのだと気づく。

角田光代『愛がなんだ』(角川文庫)

 
これだ、これだ、と思いました。 そんなふうに大学時代はみんなでワイワイ飲んでいたのですが、仕事もせずにひとり家でお酒と向きあうようになったら、ウイスキーもいろんな種類があると知って。味や飲みやすさが全然違うなと気づいたりして、お酒とのつきあい方がまったく変わったんです。それがSNSを始めたきっかけにもなりました。

映像と文章、好きなふたつを組み合わせた

自分のチャンネルで映像と文字、ナレーションを組み合わせるようになったのも、もともと話すのがそんなに得意じゃないというのが基本にあります。

大学時代は自主映画サークルにも入っていたほど映画が好きだったし、文章も好きだったので、その両方を組み合わせてみようと欲張ったら、このスタイルになったという感じです。

〝酒村ゆっけ、〟というのは、お酒の好きなところと怠惰という自分の素の部分をよりトガらせた人物です。素を見せすぎると引かれてしまうかな、というのもあって少しフィーチャーさせたんですね。

私の投稿を見てくれている方たちは、比較的同世代が多いんです。私は仕事を辞めて時間だけはたっぷりあるし、大学生活リターンズみたいな感じで発信しているから、「またこういう日々を送りたい」とは、よく言われますね。

酒村ゆっけ、「私の本」

大学時代の友だちからも、「あのころに戻れるものなら戻りたい」という声を聞きますし。仕事もやりがいを求めてというよりは、働かなければいけないから働いているという人が多いんです。 高校も大学もきちんと受験勉強して、一流大学に入って就職して、となると、やはりそのキャリアをなかなか捨てられないんだと思います。

座右の銘は、為せば成る

周囲はそんな風潮ですけれど、私は「この会社ではあなたのやりたいことはできない」と言われて、きっぱり辞めてしまいました。映画の配給会社でしたが、自分好みではない映画をプッシュするのもあまり楽しくないな、自分の好きなものだけを発信したいな、というのがあって。趣味を仕事にすると嫌いになるよ、とも聞いていたので、それもあって少し違うな、と。

まぁ、なんくるないさ、為せば成る、というのが私の座右の銘なので、年齢的にもまだ20代半ばだし、しばらくは大丈夫かなと思っています。

 

(次回へつづきます)
(取材・構成/鳥海美奈子 写真/後藤壮太郎)

酒村ゆっけ、(さかむら・ゆっけ
酒を愛し、酒に愛される孤独な女。新卒半年で仕事を辞め、そのままネオ無職を全う中。食べること、映画や本、そして美味しいお酒に溺れる毎日。そんな酒との生活を文章に綴り、YouTube にて酒テロ動画を発信している。

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