むちゃぶり御免!書店員リレーコラム*第4回
思春期を迎え、人生に悩む息子(中高生)の机にそっと置いておきたい本
漫画『幽☆遊☆白書』に、仙水忍という性格のひん曲がったキャラクターがいる。人間の暮らしを守るために悪い異界のものたちと対峙する霊界探偵の任を負っていた彼は、ある日「守るべきだった人間」が「絶対悪だった異界のものたち」に対して残虐非道を働いている現場を目撃してしまい、そりゃもう見事に闇堕ちする。人間は汚い、人間は残酷だ、人間は愚かだ…YES!! 中二病マインド。まさに今我が家にいる「思春期を迎え、人生に悩む息子(中高生)」がジョージ・オーウェルしか読まないのも、そんなマインドが暗黒爆発しているからに違いない。
息子に本を薦めるために自身の中高生時代を振り返ってみる。前述の仙水忍はもちろん大好きだったし、ホラー映画にハマりだし、人が死なない物語に面白味を感じられなかったのもこの辺だ。マリリン・マンソンに憧れヘヴィ・メタルに傾倒し、怪我もしていないのに眼帯を着用……と、息子に負けず劣らず暗黒爆発していたわけで、そんな私がハートウォーミングな物語を薦めても説得力に欠けるし、そもそも彼も受け付けないだろう。だってそういう時期だもの。っていうか私は、いまだにそういう時期にいる。
なのでかつての愛読書であった『FBI心理分析官』を薦めたい。実在した凶悪犯の心理を繙く、彼が生まれる前のベストセラーだ。
息子よ。これを読んで、心ゆくまで暗黒爆発するがいい。そして一緒にマリリン・マンソンを聴こうじゃないか。
『FBI心理分析官
異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記』
ロバート・K・レスラー、トム・シャットマン
相原真理子/訳
ハヤカワ文庫NF
本間 悠(ほんま・はるか)
福岡の独立系書店で働く傍ら、読書の楽しさを広める活動を独自に行うバラエティ書店員。お酒・ホラー好き。三児の母。
【次のお題】
お客様から「泣ける本が読みたい」と言われて、泣けるって人それぞれだからな~と困りながらもそれでも薦める本
【答える人】
くまざわ書店 飯田正人さん
本連載は、「〇〇な時に読む本」というお題で、書店員の皆様に「推し本」を紹介していただきます。〇〇部分は、前号執筆した方が、次の執筆者に対して提案します。
〈「STORY BOX」2022年12月号掲載〉