一家に一冊!『日英対訳 英語で発信! JAPANガイドブック』
説明が難しい日本の芸術や経済などを、わかりやすい英語と日本語で教えてくれる一冊。訪日外国人が増え、国際交流の機会が多くなった今こそ、ぜひ持っておきたいJAPANガイドブックです。
【ポスト・ブック・レビュー この人に訊け!】
山内昌之【武蔵野大学特任教授】
日英対訳 英語で発信! JAPANガイドブック
神田外語大学日本研究所 編
神田外語大学出版局
2000円+税
「節分」や「七五三」を外国人にどう説明する?
これからはパスポートと一緒に本書を携える留学生や観光客が増えるだろう。海外に行くと私たちも訪問先の国の歴史や文化と同様、日本を改めて見直す機会も多い。とくに外国人から日本の芸術や経済について訊かれると、どう説明するのか頭を悩ます人もいるはずだ。「雅楽」や「国学」や「やまと絵」をすんなり説明できれば、相当に日本史の基礎知識が頭に入っている人だ。しかし英語で説明するのは別物だろう。本書の有難さはそれらを分かりやすく15行くらいの日本語と英語で教えてくれる点にある。
日本の自然、日本人の心と宗教心、クールジャパンの系譜などは、いかに説明されるのだろうか。たとえば、年中行事でも「節分」や「七五三」は説明がむずかしい。節分とはもともと季節が分かれる節目の日という意味で、1年に4回あったと外国人に説明できる人は少ないだろう。また、花見とは奈良時代からあり、元来は梅が中心だったことも知らない人がいる。七五三とは、子どもの健やかな成長を願い、3歳7歳の女子、3歳5歳の男子が神社にお参りする行事であるが、英語ではなるほどこう説明するのかと頷いてしまう。
「AKB48」について、「彼女たちとは、秋葉原の小さな劇場で毎日会えます」と重要な情報をまず提供し、普通の女の子たちが披露する踊りと歌から「努力は必ず報われる」という真面目な定義も示される。
何となく知っていた「ヤンキー」の意味をこの本で知ったのは私だけではあるまい。「学校生活や社会に馴染むことのできない若者たちが、逸脱した行動をし、社会に対して抵抗する文化が『ヤンキー』です」。ヤンキーの精神は「日本文化の底流を流れています」とはなかなかに大胆な知見でもある。
私などは、「出島」や「切支丹」など日本史の専門語の英語ガイドにすこぶる関心をそそられた。書評だけでなく推薦のしがいもある基本図書である。「一家に一冊JAPANガイドブック!」
(週刊ポスト 2018年6.29号より)
初出:P+D MAGAZINE(2018/09/11)