◎編集者コラム◎ 『北前船用心棒 ◆ 赤穂ノ湊 犬侍見参』赤神 諒

◎編集者コラム◎

『北前船用心棒 ◆ 赤穂ノ湊 犬侍見参』赤神 諒


北前船用心棒

「長いタイトルでんな。おまけに漢字ばかりでひらがなの、ひの字もないのかいな」

 読者諸兄姉の嘆息が聞こえるようです。まことにもって、ごもっとも。重々承知しておりますが、ご一読いただけば、これしかタイトルはない、ということにご同意いただけるでしょう。さて、お話というのは──。

 時は元禄十四年春、播州赤穂に向け、大坂を出港する千石船がありました(文頭のセリフを関西弁にしたわけは、大坂が物語の始まりだからであります。だからどうしたと言われると、二の句が継げませんが)。元禄、赤穂とくれば、これはもう忠臣蔵が背景にあると、すぐにわかる。そう、その通りであります。

 船の名は蓬萊丸、乗組員は素性の知れない面々ばかりで、白い柴犬を連れた千日前伊十郎と名乗る犬侍まで乗り込んでいる。「犬侍」なんて本来、相手を蔑み、侮っていうことばですが、それを逆手にとって主人公の役どころにアレンジしたところが、著者の新機軸。将軍綱吉が発布した生類憐みの令のもと、お犬様を手にかければ首が飛ぶ。打擲できない犬を従えた犬侍は相手も手出しを躊躇する、いわば最強の用心棒という設定です。

 人様よりお犬様が大事などという息が詰まるようなご時世に、将軍交代を望む声が出始める。候補は二人、紀伊國屋文左衛門が推す紀州藩主綱教と大坂の豪商・三代目鴻池善右衛門がよしとする甲府藩主綱重です。いわくありげな千石船に雇われた伊十郎の身辺にも、甲斐犬を連れた怪しげな犬侍の影がちらつく。そんな陰謀など露知らず、伊十郎を用心棒に従えて、赤穂に先乗りした蓬萊丸の炊(かしき)・権左の役目は、前年に買い付けた塩の受け取り。改易にともなう城の明け渡しに騒然とする赤穂城下。始めのうち、「塩奉行」の次席家老・大野九郎兵衛に体よくあしらわれていた二人だが、伊十郎の人柄に魅了された筆頭家老・大石内蔵助の妻りくのとりなしで、ようやく両家老の信頼を取り付ける。胸襟を開いた大石によれば、松の廊下の刃傷事件の背後で糸を引いていたのは綱吉を操る犬侍だという。紆余曲折の末に、いよいよ塩受け取りの当日がやってくる。潮が満ち始めた塩田の浜に待ち受けていたのは……。龍王剣音無しの秘太刀を遣う犬侍・千日前伊十郎と相棒の柴犬シロ、日ノ本一の船主を目指す炊の少年・権左。次期将軍をめぐる紀文、鴻池と犬公方綱吉の懐刀・柳沢吉保の思惑。そして、江戸幕府を相手に果敢な戦いを挑む大石内蔵助と大野九郎兵衛の家老コンビ。読み出したらもう止められない。ニューヒーローの誕生と波乱万丈の新時代劇、ここに始まる! 『大友二階崩れ』で第9回日経小説大賞を受賞した大型新人が満を持して挑む書き下ろし時代小説文庫。

チラシ

 

北前船用心棒

──『北前船用心棒 ◆ 赤穂ノ湊 犬侍見参』担当者より
 

犬侍見参

次は、書店巡りがブームに!? 「御書印」の旅へ出かけませんか。
ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第31回