びっくり保証付き。びっくり箱をどうぞ!

『絶望ノート』(歌野晶午著)のタイトルにふさわしい結末に、絶望してほしい
書店員名前
明林堂書店南佐賀店(佐賀) 本間 悠さん

「これはびっくり箱です、びっくりして下さいね」。そう言って箱を手渡された時、あなたはうまくびっくり出来るだろうか。ミステリー小説を紹介する行為も、実はこれと同じではないかと思う時がある。やれ叙述トリックだ、やれどんでん返しだと〝ネタバレ〟してしまうのは、読者の興を削ぐのではないだろうか。しかし書店員たるもの、幾多の困難を乗り越えて本を紹介してこそ一人前(?)。この作品なら保証付き、そんな三作品を紹介させていただきたい。

『絶望ノート』(歌野晶午)

『絶望ノート』
幻冬舎文庫

 同級生からいじめを受けている中学二年生の照音は、その内容を「絶望ノート」と名付けた日記に書き綴り、いじめっ子である同級生の死を願う。すると、同級生は本当に死んでしまう……。600頁を超える長編ながら、照音の独白から、彼の母へと語り手が切り替わる頃には、もう抜け出せなくなっている。二転三転していくラストは、終わりの見えない絶叫マシーンのようだ。まだ落ちるのか! タイトルにふさわしい結末に、存分に絶望してほしい。

『殺戮にいたる病』(我孫子武丸)

『殺戮にいたる病』
講談社文庫

 衝動のままに罪を重ねるサイコ・キラーの目線で語られる殺人描写が生々しい。生々しすぎる。読了後も〝あの名曲〟を耳にする度にトラウマスイッチが発動するオマケつきだ。しかし無茶苦茶面白いので乗り越えていただきたい。どんでん返しの名作として周知されているが、分かっていても騙される。二度読み必至、時間(と心)に余裕を持ってどうぞ。

『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』(相沢沙呼)

『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』
講談社ノベルス

 今年のミステリランキングを席巻する超話題作。その優れた推理力から警察に捜査協力をするミステリー小説家と、霊能力で事件を解決に導く美少女探偵のバディもの……という事にしておこう。世界が一変する最終章は何度読み返しても痛快だ。怒濤の伏線回収パートはなんと100頁。あまりの気持ち良さに、私は読みながら泣いていた。加齢による涙腺のゆるみを感じていたが、まさか伏線回収のし過ぎで泣けるとは思わなかった。

 三作の趣向を凝らしたびっくり箱、思う存分びっくりして下さい!

〈「きらら」2020年3月号掲載〉
 
◎編集者コラム◎ 『死ぬがよく候〈五〉 雲』坂岡 真
【著者インタビュー】森 絵都『カザアナ』/日本の閉塞感に風穴を開ける、近未来エンタメ小説!