今月のイチオシ本 【ミステリー小説】

『タイトルはそこにある』
堀内公太郎

東京創元社 本体1,800円+税

 ネット上に実名を晒された卑劣な犯罪者たちが"森のくまさん"を名乗るシリアル・キラーにつぎつぎと処刑されていく『公開処刑人 森のくまさん』(宝島社文庫)で、二〇一二年にデビューした堀内公太郎。著者初の四六判単行本となる『タイトルはそこにある』は、五編を収録した作品集だが、まず注目すべきはそのコンセプトだ。

 どの作品も、担当編集者から毎回出される「回想、場面変更、一行アキ一切なしのワンシチュエーション・ミステリ 登場人物は三人で」、「会話文のみで書かれた作品(地の文はすべて削除)登場人物は二人で」といった手強い「お題」に応える形で書き上げられているのだ。

 さて、気になる完成度だが、各話いずれもよく練られており、優れた戯曲を読むように愉しむことができる(じつはこの点に関しても周到な狙いが)。唯一お題が「?」と伏せられた、某名作への心憎いオマージュとアクロバティックな大団円に唸る表題作も特筆すべき出来栄えだが、「三人の女性たちによる独白リレー(できれば三人全員を主人公に)出番を終えた語り手はふたたび語ってはならない」という難題を、パズルのピースが気持ちよくはまるように美しくクリアしてみせた第四話「雪月花の女たち」を白眉として挙げておきたい。

 これら五つの作品だけでも充分にオススメできるが、もうひとつ注目すべき点がある。それは各話の成立過程を詳らかにし、担当編集者による註が加えられた「あとがき」だ。通常、こうした楽屋裏について事細かに紹介されることは少なく、仮に触れられたとしてもさらりといった程度である。ところが本作では著者のみならず担当編集者の言葉も交えて饒舌にバックステージの様子が語られ、著者の悪戦苦闘と敏腕編集者の手綱さばきも含めて「作品の読みどころ」になっているのだ。

 ほほう、この手があったか──と感心する作家と編集者もきっといるに違いないが、どちらにもセンスと力量が問われるこの試みは、うかつに真似をするべきではないだろう。

 

〈「STORY BOX」2018年7月号掲載〉

(文/宇田川拓也)
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