ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第23回
「漫画家」を目指していた私も、
「もっとちゃんとした職業につきなさい」と言われてきた。
ここ数年、子どもの将来の夢に「ユーチューバー」がランクインしており、実際、学校に行かずユーチューバーとして活動する小学生が話題になったりもした。
世も末、略して世紀末覇者王伝説やで、という良識派嘆きの声もよく聞かれたが、子どもがこぞって、ユーチューバーやニコ生主を目指し、マイクにむかってクソデカ独り言を言いながらゲームをしている、というわけではない。
ネット調べによると、2018年の小学生が将来なりたいものランキングにおいて、ユーチューバーは男子の6位であり、女子においてはランクインすらしていない。
しかも男子5位は「会社員・事務員」である。
会社員はまだわかるが「事務員」とは、地に足がつきすぎて、もはや上半身が土中にめり込んでしまっている。
つまり、ユーチューバーなる良識派が憤死するような職業より、逆に「もう少し夢のあることを書きなさい」と言われてそうな男子小学生の方が実は多いのだ。
ちなみに男子の1位2位は「野球選手・監督」「サッカー選手・監督」と、大人が望む「子どもらしい夢のある職業」がランクインしている。
逆にこれはデキすぎているのではないか。
もしかしらた「将来はティラノザウルスになる」など、真の意味で夢のある答えをした者は、後日職員室に呼ばれ書きなおしを要求されたのではないか。
そういうティラノザウルス勢が「ティラノザウルスがダメなら野球選手」と消去法で選んだ結果、ティラノ票が、野球やサッカーに集まった可能性がある。
ティラノに比べると「ユーチューバー」は書き直しさせづらい。
そんなことをさせたら、まず親の方が、ゴジラやラドンなど、もっと非現実な生き物になって、学校に乗り込んでくる恐れがある。
ちなみに女子の方は1位こそ「パティシエール」なる、女子らしいしゃらくさい職業がランクインしているが、2位以下は、看護師、医師、保育士など、首まで土中に埋まっている現実的な答えが続く。
やはり、同年代でも、女の方が現実的なようである。もしくは女子の方が、恐竜や巨大怪獣になりたがっており、教師に修正させられているか、である。
しかし「ユーチューバー」に比べ「野球選手」や「サッカー選手」の方が現実的か、というとそんなことはない、むしろ目指す難易度とリスクはそちらの方が高い気がする。
それにも係らず「野球選手などという非現実的なものに子どもが多いなんて嘆かわしい、今すぐ『戦力外通告~クビを宣告された男たち』を鬼リピして考え直せ」などという、良識派は少ない。
おそらく、そういう人は野球やサッカーには、才能ある者がさらに努力して、栄光をつかみ取る世界という印象を持っているが「ユーチューバー」には「何の努力もせず遊んで稼いでいる奴」という偏見を持っているのだろう。