『宙ごはん』町田そのこ/著▷「2023年本屋大賞」ノミネート作を担当編集者が全力PR

『宙ごはん』町田そのこ/著▷「2023年本屋大賞」ノミネート作を担当編集者が全力PR

〝お休み〟が与えてくれたもの


 
『宙ごはん』の執筆は、書き下ろしとして始まりました。

 町田そのこさんから第一話の原稿が届いたのは2020年の5月。改稿と執筆を並行しながら半年くらい、最終話となる第五話の原稿が届きました。

「これは……!!」繁華街の喧騒と危険なにおいが満ち、ノワール小説のようでした。それまでの四話と世界は繋がりつつも、まったく異なる景色! 『宙ごはん』の一話としては異色でしたが、町田さんの中には作品の裏側や片隅に生きる人々の物語がここまで創り上げられているのかと感服する原稿でした。

 ちょうどその頃、『52ヘルツのクジラたち』が2021年本屋大賞にノミネートされ、第1位を獲得。町田さんの忙しさは増し、『宙ごはん』の改稿は少しお休みになりました。さまざまなメディアで町田さんを目にする機会が増え、とても眩しく、ちょっと遠かったです。

 執筆の開始から刊行までの約2年、町田さんとは一度も会えませんでした。えんぴつを入れた原稿とゲラの束の上でのやりとりがほぼすべて。お返事はいつも予想を遥かに超える熱量とブンブンのフルスイングで、着実にゴールに向かっている実感がありました。改稿が順調に進んだのは、お休みの間も町田さんの中では物語が育まれていた証でした。

 完成した作品は社内のひとたちにも支えられ、冒頭を「WEBきらら」で連載することが決まり、書店員さんの元にプルーフやゲラが届けられ、宣伝としてスペシャル映像が制作されました。発売前後のたくさんのサイン本づくり、テレビ出演、インタビュー取材、新型コロナの感染状況の間隙を縫うような書店訪問──緊急事態宣言下では実現が難しかったことばかり。そういう意味でも、お休みの時間は意味があったと思います。

 2023年本屋大賞への『宙ごはん』のノミネート、とても嬉しいです。関わってくださっているすべての方、手にとってくださった読者の方々に感謝をお伝えしたいです。これからもたくさんの人に作品が届きますように。

 感想を寄せてくださった書店員のみなさん、ありがとうございます。許可をいただいたすべての感想をこちらで紹介しています。ぜひお読みください。

 スペシャル映像もぜひご覧ください。撮影現場にお邪魔したとき、本格的すぎて驚きました。出演してくださった永尾まりやさん、板垣樹さん、白戸達也さん、スタッフのみなさん、ありがとうございます。

 そして最後に、この企画に協力してくださっている各社の編集者のみなさん、ありがとうございます。昨年までの担当をしていたのですが、自分がいざ書くことになって大変さが身にしみてわかりました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

https://www.youtube.com/watch?v=MhG0eoSilSc

──小学館 出版局文芸編集室 加古淑


2023年本屋大賞ノミネート

宙ごはん

『宙ごはん』
著/町田そのこ
小学館
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