特別対談 松浦弥太郎 × イモトアヤコ[第1回]

特別対談 松浦弥太郎 × イモトアヤコ[第一回]

 世界の津々浦々を駆けめぐり、苛酷なロケに果敢に挑む姿が共感を呼んでいるイモトアヤコさん。彼女がいまいちばん会いたいという松浦弥太郎さんに人生のこと、仕事のこと、コミュニケーションのことを訊くスペシャル対談が始まります。

面白く楽しく、誰にも従わず この混沌世界を泳ぎゆく作法
 イモトさんが多忙な日々のなか、「座右の書」として大切に読んでいる本が、元「暮しの手帖」編集長の松浦弥太郎さんによるエッセイ集『伝わるちから』(小学館文庫)です。「たくさんページを折って、たくさん線を引いて、わたしの本棚のなかで一番汚してしまった本です」と絶賛するイモトさんと、著者の松浦さんの対談が実現しました。
 仕事観、人生観、対人コミュニケーション。イモトさんの悩みに、松浦さんは多岐にわたる「作法」をアドバイス。「改めて松浦さんのことが大好きになりました」という二人の対談を、三回にわたってお送りします。

イモト
実際にお会いするのは初めてで、ドキドキしています。わたしは、松浦さんの生き方に、とっても憧れています。わたしにないものをいっぱい持っていて、そして松浦さんの本には「答え」が書いてある。わたしにとって先生みたいな存在だと思っています。自宅の本棚には「松浦さんのコーナー」があるほどです。

松浦
いやあ、ありがとうございます。僕もイモトさんのことは、テレビでずっと拝見してきました。僕も、ずっと世界各国を旅行していた時期があったので、親近感を覚えるんです。イモトさんは、百か国以上訪れていらっしゃいますよね。

イモト
はい。百十八か国、行きました。

松浦
旅のなかで体験したことは、自分のライフスタイルにも影響していくんですよね。イモトさんのエッセイ『棚からつぶ貝』も拝読しました。大切な人のことを思いながら文章を書いたのでしょう。僕も文章を書く時には、最初に誰かの顔が思い浮かぶ。そこからしか書けない。だから、とっても共感しました。「同じだなあ」って。

イモト
ホントですか! 嬉しい。一番嬉しいっ。

松浦
テレビで観ても、文章を読んでも、ピュアですよね。あと僕、イモトさんのラジオを聴いているんですよ。

イモト
ええっ! まさかの!

松浦
僕、「ラジオ人間」なんです。

イモト
TBSラジオ「イモトアヤコのすっぴんしゃん」。聴いてくださっているんですか?

松浦
投稿が読まれるとステッカーがもらえるんですよね。

イモト
すごい! ありがとうございます。

松浦
ラジオでのお話しぶりもリラックスして、イモトさんらしい。素晴らしいと思います。きっとどこかで、リラックスする方法を会得したんだろうな、って。

イモト
ありがたいことに、同じチームで、同じ人たちとお仕事する機会が多いので、もしかしたら、それがリラックスできる理由なのかもしれません。

松浦
周囲の人たちやスタッフとのコミュニケーションぶりがいい。僕も、視聴者、読者、リスナーのひとりとして対峙した時に、とても心地良くなる。そうさせるのって、意外と難しいことだと思うんです。

イモト
じつは、リラックスできない時もあるんです。そういう時の番組は、オンエアを自分で観ていても「うわあっ!」って頭を抱えます。好きじゃない自分が出ている。「うーっ!」ってなる。それを乗り越えていく方法がまだ見つからないんですよ。

イモトアヤコさん

松浦
まあ、良い意味で「開き直る」ってことが大事ですね。

イモト
「開き直る」?

松浦
「受け容れる」。つまり全肯定なんですよ。驚いたり、「えっ!」と思ったりすることがあっても、基本、全肯定する。わが身に起こる、良いこと悪いことの両方を全肯定するんです。ただ、イモトさんは既にそれができているように僕には思えるんですよね。そんな「根っこ」の存在を、イモトさんに感じるんです。僕も似ている。同じタイプだと思う。

イモト
嬉しい。めちゃめちゃ嬉しい。「全肯定」。いや、そうでありたいです。でも、本当に信じられないぐらい悪いことが起きた時、「受け容れなきゃ!」と強引に思わないと、と力んでしまう時も、まだあるんです。

感謝すると恐怖心がなくなる

松浦
たとえ話ですけど、僕、ジェットコースターがすごく苦手なんですよ。

イモト
ジェットコースター。絶叫系とか?

松浦
絶叫系。苦手なんです。あと、飛行機が揺れる時も怖い。でも、そんな時に「わあ、怖い怖い!」って思っているだけだと、辛いじゃないですか。

イモト
辛いです、辛いです。

松浦
だから、それを「受け止める」。一つのアイディアというか、工夫として「ありがとう」って思っちゃうんです。「ありがとう」って声に出して言うんです。

イモト
えっ。ジェットコースターに、ですか?

松浦
乗りながらも「ありがとう。ありがとう!」って。

イモト
(爆笑)

松浦
感謝するんですよ。感謝すると、人って恐怖心が無くなるんですよ、不思議と。

イモト
えーっ?

松浦
この恐怖が、いつか何かの役に立つかもしれない。良い経験になるかも知れない。だから、敢えて感謝してみる。そうすると、自分が怖いとか、拒絶したいとかいうこと自体も、自然と受け容れられるようになってきたんです。まあ、「無理やり思い込む」みたいな感じではあるんですけど。自分に起きる出来事を、アングルを変えて見てみれば、嫌なことでも良いことに変わるはずだと思うんです。それはおそらく、「自分なりの生き方」みたいなことにも通じると思うんです。僕には自分の「根っこ」にそういう思いがある。たぶん、イモトさんにも「根っこ」にそういうちょっと「マトモじゃない感じ」があるのかなって……。

イモト
(爆笑)。

松浦
「大丈夫か?」と。「こんな状況で『ありがとう』って言う?」みたいな、そういう部分をお持ちだと思うから、たぶん続けていけている。乗り越えてきている。本を読んで、そんなことを感じたんです。

一穂ミチ『スモールワールズ』
スペシャル企画 池井戸 潤さん『ロボット・イン・ザ・ガーデン』劇団四季ミュージカル観劇記