『それいけ！平安部』（著／宮島未奈）「新刊試し聴き」◆ポッドキャスト【本の窓】

春はあけぼの！平安部　『それいけ！平安部』のアイデアが生まれたのは2023年４月のことです。当時わたしは『成瀬は天下を取りにいく』でデビューした直後でした。編集者から「高校生の部活ものなんてどうでしょうか」との提案を受け、とりあえず書いてみますと引き受けたのがきっかけです。もともとのイメージは、うすた京介さんの漫画『セ

１人でも欠けたら成立しない唯一無二の部活　宮島未奈さんの新作『それいけ！平安部』は、高校生たちが新しい部活を作る物語。平安時代マニアが登場すると思われるかもしれないが、実は顧問も生徒も限りなく知識はゼロ。彼らはいったいどんな活動をするのか？　優しくて笑えて眩しい青春小説が生まれたきっかけは。他にない部活を１から作る話が

評者＝内田 剛（ブックジャーナリスト）　これぞ「青春」の息吹！　さがせ「平安の心」！　「いみじ！」「あないみじ！」『それいけ！平安部』を読み終えたら、誰もがこの作中で繰り返される言葉が口癖になるに違いない。かくいう僕も読み終えたその日から寝ても覚めても「いみじ」。何事も「ヤバい」改め「いみじ」となった。まんまと罠にはま

　ブックジャーナリストの内田剛さんをお招きし、2025年本屋大賞ノミネートの10作の魅力をたっぷりご紹介します。前編で取り上げるのは、早見和真さん『アルプス席の母』、阿部暁子さん『カフネ』、山口未桜さん『禁忌の子』、一穂ミチさん『恋とか愛とかやさしさなら』、野崎まどさん『小説』の５作です。

　小学三年生のとき、わたしの書いた読書感想文が市のコンクールで入選して、作品集に載った。読んだ本は、竹下龍之介さんの『天才えりちゃん金魚を食べた』。執筆当時六歳だった竹下さんが、五歳下の妹との日常をフィクションを織り交ぜて書いた物語である。感想文には「自分と変わらない年齢の子がこんなおもしろいお話をかけるのはすごい」と