ニコデモ

◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第13回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧  椰子(やし)の葉ずれ、鳥の羽ばたき、猿の咆哮(ほうこう)といった遠い音は、もう耳慣れてしまって、聞こえていても無音と同じだった。聞くべき音、聞
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第12回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧    それは国富(くにとみ)に来た初めての戦死公報だった。戦死ではなく戦病死だったが、村の者は誰も、憲兵たちや村長さえ、そんな違いは気にも
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第11回
「私はすぐ行かなければなりません」アッレは言った。「伝言があります」「元気だったのか」 そう言いながらニコデモは、この女が警察に尾行されたのではないかと恐れた。ことによると、ここに匿(かくま)ってくれなどと言い出しはしないか。
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第10回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧    そしてベッドから起き上がって服を着終えた時から、ニコデモの生活は一変した。靴紐(くつひも)を結び終えてもいないうちからノックの音がし
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第9回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧 「それは恐らく、真面目な話なんでしょうけれど、でもごめんなさい、笑っちゃう」  そう言いながらアンティヌッティは笑みを浮かべた。しかしそれ
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第8回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧  墺太利(オーストリア)が独逸(ドイツ)の一部分になったあたりから、アンティヌッティはニコデモに向かってはっきりと、作曲を促すようになった。
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第7回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧    ラスパイユ通りのはずれから入るゴルゴン小路(こうじ)に面したアパートは、室内に入ると通りの薄汚さが噓のように広々として天井も高かった
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第6回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧  それを聞くとアンティヌッティの唇が、頰の上で大きく広がった。瞳がじっとニコデモを見た。まるで催眠術をかけようとしているみたいに。ニコデモは動じなかった。
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第5回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧    ピリエ国での生活は修道僧の如(ごと)しで苦行を重ねておりますが、世間の風に曝(さら)されることもなく純粋なる学究の世界に埋没でき
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第4回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧 「かよ」市兵衛(いちべえ)は赤ん坊をおぶった女の人に声をかけた。「せがれだ」  かよは「判(わか)ってる」と頷き、正太郎(しょうたろう
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第3回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧    気がつくと鈴木正太郎(すずきしょうたろう)は、またしても雑踏の中にいた。  昨日のことはすべてがぼんやりしていた。詰襟を着た東
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第2回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧  とうとう半ば常軌を逸したニコデモは、船着き場に積み上げられた大きな木箱の上によじ登り、たったひとつ残された小僧の形見を歌い始めた。  
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第1回
「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載一覧    昔むかしの大昔、日本が戦争に勝っていたころ、ある裕福な家に、一人の男の子が生まれた。両親はこの子をニコデモと名付けた。父母ともに