◎編集者コラム◎ 『小説 ホットギミック ガールミーツボーイ』(豊田美加 原作/相原実貴 脚本・監督/山戸結希)
◎編集者コラム◎
『小説 ホットギミック ガールミーツボーイ』(豊田美加 原作/相原実貴 脚本・監督/山戸結希)
相原実貴によるコミックス「ホットギミック」は、『ベツコミ』2000年12月号から連載がスタートした少女漫画です。
2000年といえば、私はまだ小学生でしたが、バブルはとっくに崩壊したというのに、不思議と楽しげな世間の雰囲気を、いまでも思い出すことができます。慎吾ママの「おっはー」をマネして友達と挨拶しあったり(指でつくった輪っかを開く動作とともに…)、中高生のお姉さんたちが履いているルーズソックスを眩しく眺めたりしていました。
「ホットギミック」は、あの時代に青春真っ只中を生きていた中高生たちの物語。本人たちはおとなになったつもりでいるのに、家庭の経済状況や親同士の付き合いに人間関係をかき乱されてしまうもどかしさ。まるで主人公の親友にでもなった気持ちで、共感しながら読み進めてしまいます。
いまも根強いファンに愛されるこの原作に目をつけたのは、業界が注目する新進気鋭の映画監督・山戸結希。魅力的なキャラクターたちはそのままに、中高生の女の子特有の気だるげな憂鬱をリアルに表現し、まったく新しい独自の世界を作りあげています。(映画「ホットギミック ガールミーツボーイ」は6月28日公開!公式サイトはこちら)
さて、私が編集を担当した「小説 ホットギミック ガールミーツボーイ」は、この映画のノベライズ作品です。著者の豊田美加さんは、『小説 響 HIBIKI』や『ういらぶ。』等々、ノベライズ作品の著者としても数多の実績をお持ちの作家です。
実はこの映画、一言で表現できない感情や関係性がたくさん折り重なっていて、深みのある作品なだけに、小説にするのはとても難しいだろうと感じていたのです。
ところが…お仕事をお願いした段階ですでに「ホットギミック、大好きでした!」「山戸監督の『溺れるナイフ』も、ものすごく良かったですよね」と豊田さん。どうやら親和性バッチリ(さすが!)。やはり、小説作品として読んでも読み応えのある、とても素晴らしい作品に仕上げてくださいました。
たとえば冒頭のシーン。(思わずちょっとだけご紹介)
考えたことがある?
自分はなんなのか。
私は、いつも考えてるよ。
私はなに?
この世界は誰のもの?
『……一番線、豊洲行きドアが閉まります』
アナウンスが終わると同時に、初は電車を降りた。
背後でドアが閉まって、高架駅に、潮っぽい風が吹き抜けていく。
潮風の匂いは、プランクトンの死骸の匂いだって聞いたことがある。生き物が死んで、腐った匂い。どうりで、ちょっと生臭い。アレのときの匂いみたいに。
ぬるっとした潮風は夏の気配を残しながら、初のストレートボブの髪をサラサラと揺らしていった。
…思わず初の脳内世界にトリップしてしまうような鮮やかな描写!
監督と東映の担当の方とも相談をし、映画とはひと味違うラストシーンもご用意させていただきました!
映画の登場人物たちの意味ありげな沈黙に、新しい解釈が生まれるかも。あなただけの「ホットギミック」を、二度も三度も味わえますように。
映画とともに、ぜひお楽しみください。