ゆっきゅんの毎日今日からちゃんとしたい日記 ☆2026年5月後半★

5月15日
わりと好きなグループのかっこいい新曲があんま好きな感じじゃなかったことによって、まず、私はかっこいいものに興味がないんだ、と今更気づいて愕然とした。かっこいいものはいつも人気だ。私も嫌いではない。けど、なにか最終的な判断を下すときや、なにも最終的ではない軽率な判断を感覚的にやるときの基準に、「かっこいい」かどうかは、重要ではない。偉そうに。じゃあ何なんだ。わかったよ。私の価値基準ベスト3を考える。
⭐︎自分を構成する3つの基準⭐︎
まず「面白い」、次に「切ない」、……少し空いて「かわいい」、だろう。
これは自分の持っている要素ってわけでもなくて……何かを選ぶときや惹かれるときの審美基準みたいなもの。考えて言うの流行れると思う。ポストMBTIきた。おめでとう。
5月16日
芸能人やアイドルや知り合いに対して、太った?は言ってはいけないのは当然になっていると思うけど「痩せすぎ」はこっち側の正しい心配なのだという認識に基づいて言及が許されている空気感があって、間違ってると思う。「痩せすぎ」の読み仮名が「マンジャロ?」であることもたいへん虚しく感じる。
楽しかったから忘れていたけど、引っ越し前あたりから私の限りあるエネルギーは爆発してしまっていた。一日中働いて帰宅して寝る前にやる気出て家具組み立てて疲れを感じずに寝るとか、そんなアドレナリン頼みの日々を続けていたのがよくなかったのかもしれない。とにかくLIQUIDROOMのワンマンライブまでは、無理せず体調を整えるそれだけを優先して生きていかなければならない。いつだって季節の変わり目は注意が必要なのに、最悪の寒暖差もなく誰でも適応しやすいスムーズでナチュラルな季節の変わり目になっていたから油断してしまったか。それでも今は季節の変わり目だったってことか。少しタスクに手をつけると頭が痛くなる。水を飲んでよく寝よう。と思ったのも束の間、自分の精神的な不安を和らげるためにライブグッズのDIVAペンライトを再発注してからやっと寝た。入稿のできる歌姫。注文はセルフケア。
5月17日
映画『アニエス V.によるジェーン B.』を観ると、ジェーン・バーキンがバッグの中身を紹介するとか言ってエッフェル塔前の広場で多すぎる荷物の中身を地面にぶちまけて笑っていた。今後、かばんパンパンすぎだろってなったり、いつのだよみたいなレシートがバッグの底に入ってたとしても「ジェーン・バーキンみたい」で済ますことができる。他人の荷物についても、「ジェーン・バーキンみたいだね」でいける。
5月18日
テレビ用のスピーカーが届く。少しいい音で映画を観たい。基本的に白くないかわいくない家電は買えないので、選択肢は狭くなってあまり迷う必要がない。設置してみると、サイズ感は完璧だったものの“ガジェット”感がありすぎて、“MONOQLO”っぽすぎて、慌てて左のスピーカーの上にキティちゃんを置いて、右のスピーカーにはシルバーの翼が生えた聖母像を乗せた。これで自分の部屋の間抜けなバランス感覚を保つことができる。
5月19日
1年前のインスタストーリーに
ていうかストーリーって
夜の気持ちは夜に消えて
朝の気持ちは朝に消える
ってことじゃん
やば
って書いてあった。
5月20日
善い人になるために文化を享受するわけではない。
5月21日
私の人生のあるある。サロンの予約を効率よく取れなくて、いわゆるメンテナンスDAY/美容DAYを作れない。行く場所はいつも変わらない。ネイルは原宿駅の近く、眉サロンは竹下通りの近く、美容室は表参道と原宿の間みたいな場所にあって、だいたい撮影前やライブ前に合わせて行くのだから丸1日の予定として立てられたらいいのに、うまくできない。結果、週に3日、朝や昼に原宿表参道方面に行くとかいう1週間を作ってしまう。スナップ待ちのファッションモンスターか。
ネイルサロンでは全ての指をワンマンに向けてミラーボール仕様にしてもらった。ベースにシルバーを塗って、ピンセットで一枚一枚ミラーの小さな四角い薄いパーツを敷き詰めてコーティングして、爪の根元の方にはピンクのハートから白い羽が生えているパーツをつけてもらった。10本ミラーボール。ステージには5台のミラーボールが設置される予定で、衣装の両肩にもミラーボールのようにスパンコール装飾がついて、ミラーボールからシルバーの翼を生やした「エンジェルミラーボールステッキ」通称:杖も使う予定なので、5/26のライブのミラーボール数は18になる。誰にも負けたくない。
5月24日
ワンマンライブの物販のために、新衣装を着てランダムチェキを撮影する。バラが咲いているはずの去年と同じ公園に来たら、バラエリアは全て工事中だった。そんなに狭くなかったし、一箇所って感じでもないのに、バラがあったはずの場所は入れなくなっていた。衣装のYUHEIさんとがっかりしながら、でもなんか岡崎京子みたいでもあった。岡崎京子のどれだったかなあ、『チワワちゃん』あたりの短編集に入っていたと思うんだけど、女の子二人がなにか予定を変更して、昔そのひとりが住んでいた街の思い出のお花畑に行ってみたら、そこに風情のないマンションが建ってるの。お花畑じゃないマンション。そのマンションが見開きで描かれていたんだよね、たしか。なんかあの空虚な哀感を覚えてる。
仕方なく、なんかの花の前でたくさんチェキを撮りました。
5月25日
明日のライブのゲネプロ。マネージャーがでっかいパンを買ってきてくれて、君島くんはでっかい唐揚げを作ってきてくれた。パンを食べているえんぷていの二人がなんか可愛くて写真を撮る。その君島のでっかい唐揚げは、森、道、市場とかパンと音楽とアンティークの屋台で見るようなアースカラーの使い捨て弁当箱に入れて持参されていた。なんでそのタイプの弁当箱を自宅に持ってるんだろう。君島は俺のちっぽけな想像を超える。
5月26日
今日でDIVA、5年。歌が好き。輝くのが好き。私は生きている。
LIQUIDROOMで絶対したい話があった。10年前は渋谷センター街にブックオフがあった。今はGUになったビルの、クアトロの下の階だった。遅くまで開いていた。よくそこで時間を潰した。200円以下の古本なら躊躇うことなく買ってよしというマイルールがあって、多くの本を閉店時刻の間際に気軽に買った。小倉優子さん(以下、ゆうこりん)の1stライブの写真集を買った。買ったってことはつまり200円以下だったんだろう。ゆうこりんの歌手デビュー1周年を記念したファンクラブ限定ライブが恵比寿LIQUIDROOMで開催されてそのステージと舞台裏に密着した写真集だった。10年前にそのゆうこりんを見た時から決めていた。いつかLIQUIDROOMのステージに立った時には、この話をする。ゆうこりんと同じステージに立ててうれしい!ってかならず言う。念願のリキッドでやれてうれしい、そう語るとき、バンドマンたちは誰もゆうこりんの話をしないだろう。いい音楽のことばかり一生懸命考えているミュージシャンが、ゆうこりんの20年前の写真集にたどり着くわけもない。私は念願のMCをすることに成功した。写真集は何年も前に手放したので表紙しか覚えていない。
なんで今日を迎えられたんだろう、なんでこんなに大切なファンの人たちと出会えたんだろう、なんでここに集まれたんだろうって、その理由がわかった。私の勇気だった。本当に誰にも頼まれていなかったのに勇気を出し、勇気を出し、勇気を出し、何度も勇気を出した。そしたらみんなが歌を聴いてくれて、一緒に演奏してくれる仲間にも出会えた。私の勇気が、私をこの場所に連れてきた。私の勇気が、あなたと出会わせてくれた。ありったけの、ありあまる勇気に困らされながら楽しく生きてきて本当によかった。
大好きなファンたちに「JEWEL」というファンネームを今更決めた。
輝いているから。
今更とかないよね。
今更輝いていこう。
5月29日
K-POPグループXLOVの新曲『SERVE』のパフォーマンス動画を見る。リールで涙することだってあるんよ。全員良いけどルイのこの曲の誰にもその魅力放出を止められない身体表現はあまりにもこちらに向かった祝福として届く。光光光。この人たちがやりたいこと、私には全部わかるよって思ってしまう。まず、やりたいことがある人や集団って貴重だ。表現したいものがあって、そのために卓抜したスキルが使われて、わざわざスキルへの言及に至らないほどその技術がノイズにならなくて、みたいな。簡単に言えばすごすぎるってこと。ジェンダーレスコンセプト(これはわかりやすく他人に伝えるための言葉として親切に立てているのであろう)で、ウムティというカリスマメンバーのセルフプロデュースでやっている4人組XLOVは、やっぱりソロでDIVAやってる自分から見ると、集団なのがすごいなって思う。ヒョンのしなやかなパワーも、ハルの先輩たちについていく感じも、みんな素晴らしい。私がこれをやりたいと夢見たとき、誘えるだろうか。乗ってくれるだろうか。全員楽しそうにやれるだろうか。そう想像すると、XLOVってほんま奇跡なんよね(涙)などと、普通のオタク発言しかできんくなります。とくに新曲に関しては、クィアカルチャーを発祥とするハウスミュージックとVOGUINGのダンスカルチャーへみなぎる敬意というか自負……文化を自分たちの手に取り戻していく営みとして映る。「取り入れた」みたいなノリじゃない。ようこそっていう顔。お見せしますねっていう気概。かっこいい。
5月30日
大阪へ向かう新幹線の中で、メロディもないのに歌詞を少し思いついてPCを開く。ひらめくのはうれしい。夏歌の歌詞がすらすらとワンコーラス思い浮かんだけど、今年の夏には間に合わないだろう。歌詞の中では海辺での切ない場面が進んでいったので私もこの主人公と一緒に切なくなる。Tシャツが似合わない人が、Tシャツが似合う人と過ごす夏。私の人生に海辺で誰かと切なくなった記憶は、特にない。
現代美術家のやなぎみわさんが演出した能を見るために写真家の須藤絢乃さんと大阪の中之島美術館へ行った。XLOVのルイのような人が出てきたなと思ったらやりすぎたルイのような完璧な身のこなしを目の前で披露してくれて、「昨日見たやつだ」と思っていたが、上演中はそんなことは誰にも言えるわけがなかった。ちなみに私は能をやったことがある。6年生は総合学習で全員が能楽を経験する小学校だった。秋に能楽堂に立った。
5月31日
ケンカ喫茶という喫茶店のジャンルを発見した。絢乃さんが連れて行ってくれた喫茶店は、関西時代によく大切な打ち合わせで使った店らしい。階段を上り、朝の開店と同時に2階の店に入る。ホワイトグレーの大理石調の壁に囲まれた、随所に大きな丸みと冷たさのあるモダンな建築。ワンフロアだけど吹き抜けになっていて3階が見える。天井が高く、床は花柄の絨毯が敷かれて、奥には木製のグランドピアノがあり、窓側は一面ガラス張り。ギャザーを寄せたオフホワイトのシャーリングカーテンの裾にスカラップ状のたるみを作って、外には均等な幅でバルコニーに設置された植物が見える。なんとなく、もちろん……ね……といった阿吽の呼吸で窓際の席を選択した。豪華なホテルの中のカフェっぽくもある。
「ここケンカだね。しかも女性の口ゲンカだ。ケンカしがいのある喫茶店だね。ケンカしたいね。ケンカしよっか。ケンカしようよ」「そうなんですよ」
店員さんが水を持ってきてくれたとき、これは、目の前の相手に一度きりの完璧なタイミングでぶちまけるものだと確信した。この店は、ケンカ喫茶だ。観ていない映画なのに、桃井かおりと岩下志麻は映画『疑惑』でこんな店でケンカをしているんじゃないかと予想した。この店は殴り合いが出来る店ではない。品格の保たれた店内であるゆえ、ケンカをするとしても、取っ組み合いは許されない。すぐに仲直りするような子どものケンカも似合わない。つまり、プライドの高い大人が腹の探り合いをしたのち、エスプリの効いた長台詞で、大声ではない声量からケンカを始め、我慢の限界が来て、厚化粧に水をぶっかけて帰るような喫茶店だった。
きっと、ケンカを始めるタイミングには、トイレの存在が寄与するだろう。「トイレを見てきてほしいんです、すごいんです」と絢乃さんは言った。私たちは仲が良すぎて、まだケンカを始められていない。男子トイレはまろやかに豪華だった。ただ、化粧を直すこともない男性陣がここでお上品ゲンカを始められるかと思うと無理か、って感じもした。しかし私が店外のトイレから窓際の奥の席に戻るときの距離と時間はケンカを始めるには十分な準備時間に思えた。歩きながら壁に飾られた絵画の中の人物とアイコンタクトを取り、決め台詞を反芻するのだ。「男子トイレとしては可愛すぎるトイレでしたが、もっとすごいかと思いました」。席に戻って聞いたところによれば、女子トイレがザ・ケンカトイレらしい。鏡が大きくて洗面台が多くて花柄なのだそう。絢乃さんの考えるここでの理想のケンカは、女性4〜5名ほどでこの店を訪れて歓談し、途中でトイレに行った二人がトイレ内でケンカをして、何事もなかったかのように席に戻ってくるが、どこか様子がおかしくはある、といったもの。なるほど、OLケンカだね。やはり私は大女優ケンカ志望かな。
ケンカ喫茶に、夢がある。
(次回は8月13日に公開予定です)
DIVA・作詞家 1995年岡山県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科比較芸術学専攻修了。2016年、ルアンとのサントラ系アヴァンポップユニット「電影と少年CQ」を結成。2021年よりセルフプロデュースでのソロ活動「DIVA Project」を本格始動。アーティストとして楽曲を発表するほか、作詞提供、コラムや映画評の執筆など活躍の幅を広げている。アルバムに『DIVA YOU』『生まれ変わらないあなたを』、最新EPは『こんな半日を宝石にして』、最新シングルは『WALK』。文化放送「武田砂鉄 ラジオマガジン」水曜後半レギュラー。
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