スピリチュアル探偵 第17回

スピリチュアル探偵 第14回
コロナ渦をサバイブする
やり手経営者の伝手をたよって、
いざ鎌倉!

たとえば政治家や経営者など、地位のある人には意外とスピリチュアルな世界に関心を持つ人が多いもの。実際、名のある占い師や霊能者が、誰もが知るようなビッグネームを太客に抱えているのはよく聞く話です。

そういえば僕の周囲にも、「あのとき、占い師のアドバイスに従って上京したから今がある」と語る売れっ子作家がいます。もちろん、彼の成功はあくまで本人の努力と才能の賜物ですが、それでも「こんなに賢い人が信じているなら、やっぱり科学で説明できない不思議な力は存在するのかも……」と思ってしまうことがしばしばあります。

日頃からよく酒席を共にしている友人のMさんもまた、そんな人物の1人。Mさんは独特の才覚でこのコロナ禍を物ともせずサバイブしているやり手の女性経営者で、社長仲間のあいだで話題の霊能者情報をたびたびたれ込んでくれる貴重な存在です。

地方で活動している無名の占い師から、カウンセリング料が数十万円もする海外の大物まで、彼女がもたらす情報は実にバリエーション豊か。本来であれば片っ端からあたっていきたいところですが、生憎のコロナ禍により、海外はもちろん地方遠征すら憚られる状況が続いています。

そんなある日、Mさんから新たな有力情報が飛び込んできました――。

〈CASE.17〉運気の流れを見通す霊能者を訪ねて、いざ鎌倉!

「また凄そうな人を紹介してもらったよ! 鎌倉なんだけど、今なら観光客も少なくて密にはならなそうだし、よかったら行ってみない?」

聞けば、すでに彼女の友人が数名、その先生のカウンセリングを受けているそうで、なかには恋人の職業までぴたりと当てられた人もいるというから期待は高まります。何より、古都・鎌倉は霊的なものと親和性の高いイメージ。もしかすると本物に出会えるかも!?

そんなわけで、雨のそぼ降る初秋の某日、僕たちは鎌倉駅に降り立ちました。駅からは少し距離があるようなので、タクシーを捕まえて目的地を目指します。途中、車窓の向こうを流れるしっとりと濡れた鎌倉の街が、これまた霊的な風情を感じさせていい感じです。

すると――。完全にMさん任せだったので、タクシーがどの方角へ向かっているのか僕は認識していませんでしたが、ふと見覚えのある風景に出くわしました。今まさに通り抜けようとしているのは、知る人ぞ知る鎌倉幕府滅亡の地、「腹切りやぐら」ではありませんか。

「やぐら」というのは、鎌倉周辺に残されている大昔の横穴のこと。物騒なネーミングの通り、この腹切りやぐらは倒幕軍に追い詰められた北条高時が自害した場所とされ、地元では有名な心霊スポットになっています。

僕も数年前に一度、撮影に訪れたことがありますが、戦死者の魂を供養する卒塔婆が立てられていて、実におどろおどろしい場所でした。否が応でも霊能者と対峙するムードが高まります……。

 


「スピリチュアル探偵」アーカイヴ

友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

12/5(土)、TBS系「王様のブランチ」で辻堂ゆめさんの新刊『十の輪をくぐる』が取り上げられます!
思い出の味 ◈ 井上荒野