みんなのレビュー >>>『国会議員基礎テスト』


ぬしすけさん ★★★★

高校生にはこれを読ませて勉強するべき。かくいう私も小説として面白いだけでなく、とても勉強になった。前半は現実のあの人だこれ、って笑うシーンが多かったけど、後半はひたすら面白く、どうなるのかと気になった。首相の「妻のパートで月20万」というふざけた感覚の政治家が多いので、被選挙権を得る為には「民間企業での実務経験3年以上」とか付けるべきと思ってたけど、優太郎みたいにコネで入って働きました、ってだけになる人も多いやろうなと感じていた。実際には選挙の度にというのは難しいだろうけど、こうした試験は良いと思う。あとは政治家にも定年か上限を設けるべきでは。


mamaさん ★★★★

 黒野伸一さんの作品はいくつか読んだことがありますが、いつも同じ不満を感じました。まず、ほのぼのとしたエンタメ作品であるわりには、ユーモアが足りないこと、それと、生々しさがない、ということです。その二つが加われば、更に面白くなるだろうに、と残念な感想を持つことが多かったのです。
 ところが、今回は、面白かったです。最初は、「またユーモアと生々しさの無い、黒野節を読むのか」と思いながら読み始めていたのですが、最後まで読んで、充足した満足感を得ました。
 どの人物設定にも矛盾も極端さもなく、突拍子もない話の展開もなく、リアリティのある作品でした。そして、最後に若者層に強い影響力を持つ一人の少年がキーとなって黒部優太郎を救うという話の展開が、胸のすくような爽快感を与えてくれました。
 エンタメ作品としては、とても面白いものだと思います。私は大好きでした。
 では、五つ星にしなかった理由が何かというと、いくつかあります。まず、「国会議員にも試験を」という大前提が、ちょっとあり得ない、という印象を持ってしまうこと、次に、政治家が本当にここに書かれているような人ばかりだとは思えない、ということ、そして何よりも大きかったのは、黒野伸一がこれを書かなければいけなかった理由がわからない、ということです。ある程度の筆力のある人が同じ設定を与えられて書いても変わらなかったのでは、と思ってしまうのは、黒野伸一という作家の個性が何たるものかが謎であることに起因しているのだと思います。ただ、読みやすく簡潔な文を書くことのできる、構成力に長けた、有望な作家さんだと思うので、これからも素晴らしい作品に期待しています。
 私には全く縁のない政治の世界を垣間見ることができて、大変勉強になりました。また、老人介護や過疎化、企業のブラック化など現代社会の問題点に触れることもできて、ぜひたくさんの人に読んでもらいたい作品だな、と思いました。色々な人に問題提起できる作品なので、突拍子無いと思いつつも、大ヒットしてみんなに読んでもらえることを願います。


職場では別人さん ★★★★

レビュアー:将来はワイナリー経営者

ドラマにもなった『限界集落株式会社』。その著者が描く政治小説である。とは言え、私は『限界集落株式会社』を読んだことがない。政治小説も読まない。ただ、エンターテインメントというのは好きだ。

エンターテインメント小説は、難なく読める構成になっている。まず、難しい言葉が出ても解説があるので、理解しながら読める。この小説は、「基礎編」「中級編」「上級編」「実践編」と4部構成となっている。「実践編」以外は、「問」いがあり、その問いについて考えながら読むことで、無意識に政治について理解しながら読むことができる。次に、登場人物の役割がはっきりしている。年老いた政治家は悪役に徹している。私はこのぐらいさっぱりしている方が好きだ。最後に、現実世界がベースになっているところだ。今回は、「国会議員基礎テスト」を実施し、法にしようとする物語だが、舞台が現実世界となっているのでイメージがしやすくなっている。

私の中では政治家達でなく、秘書の杉本真菜がこの物語の主人公だと思って読んでいた。彼女が成長していく姿が一番感情移入しやすかった。

最終問題の「あなたは国会議員に資格試験は必要だと考えますか?」との問いに関して、私は「いいえ」と回答する。単純に勉強できるから、資格がありますよとは言えないと思っているからだ。たまに読者に向けてドキリとさせる問いが来る。それを考えながら読む進めるといつの間にかどんどんページも進んでいるので、是非とも体験してほしい。


みっきぃさん ★★★★★

毎日の生活に精一杯で政治に私は全く興味がなく、もはや政治とは世界が違うと思っているふしがある。
この小説、そんな私でも夢中になり一気読みしてしまった。
政治はカネと切り離せない事情や、実態。税金の無駄使いや党内の世界が、リアルに描かれ、本当に国会の中に潜入したように錯覚する。
実際にいた国会議員のような方も出てきたりとぷぷっとさせられる場面もある。
党の中でも政策ごとに考えも違う。それを党で1つにまとめるのは無理がある。確かにそうだ。全く違う考えを探すのも難しいように、全く同じ考えをもつ人なんかいない。それぞれ国民の負託を受けた独立した存在だ。
私も実際党でなく、人で投票する。
若い人でも投票権が広がったとはいえ、投票率は低い。
それは投票してもなにも変わらないと諦めてることもある。そして政治の事を知ろうとすることも辞めている。
でももっと身近なことから政治を感じることに積極的になるといいと思う。この本を読むことは、日本の未来を考えるきっかけになるはずだ。


なぎやっこさん ★★★★

基礎、というよりは裏の部分にスポットを当てつつ話が進むので面白かったです
問いかけ形式というのも考えつつ読み進められるので、よかったです


あいでんさん ★★★★★

悔しいけど、面白かった!
この本をきっかけに政治について勉強しよう、と思える人が果たしてどれくらいいるか。
日本の国会中継のくだらない質疑応答を見ていると、これが国民の選んだ代表かよ、とうんざりするが、それがまかり通っているのが現状だ。
著者はそこに国会議員テストをしたらどうかという提案と共に本書を発売することにしたのだ。国民の代表でありながら、特別必要な資格がないというのは盲点だった。
本来選挙で、政策や課題認識について議論をしてそれを国民が選ぶという形が理想的だが、現実はそんなの夢のまた夢だ。そうであれば、無理やり知っておくべき事項をテストという形で問うのもひとつのやり方かもしれない。

ただし、皮肉にもそれを決めることができるのは国会議員自身だ。さあ、どうする。


晴さん ★★★

作者の黒野真一さんは「限界集落株式会社」で知った。
今度は政治かあ。ダメな政治家にテストを受けされるなんて面白いけど、ネットで話される他愛ない怨嗟に似ている。某巨大掲示板なんかで語尾に「w」付きで話されていそうな話だ。
正直途中まではその予想の範囲を出なかった。どこかで聞いたようなダメ政治家が出てきたり、選挙制度の情報があってそれ自体は面白かったので「いっそ政治や近代史の副読本としてパロディ小説書いたらいいんじゃないか」と思ったりもした。
けれど物語半ば、いかにもダメな三世政治家として書かれていた黒部優太郎の再登場から、物語は単なるパロディではなくなる。

そういえば、「限界集落株式会社」でもそうだった。成功した都会人、限界集落の農家を営む住人、なんだか頼りない若者、嫌みな役人……出てくる人たちは陳腐な程パターン化されたキャラクターだらけだった。都会人は机上のことばかりでいけ好かなく、限界集落の住民は排他的で保守的、若者は自分に甘く、役人はことなかれで新しいチャレンジを歓迎しないどころかつぶそうとする。うまくいかなかろうが貧しかろうが、自分たちの居場所がなくなろうが、これじゃなるべくしてなる、まさに「自己責任」だという人たちの姿が描かれる。
しかし、話はそこでは終わらない。彼らはチャレンジした、体を動かして働いた、たくさんの人に会い頭を下げた。読み進めるにしたがって応援していた。土のにおい、汗のにおい、ガソリンと排ガスのにおいを感じるほどに。

馬鹿ボンがどう変わっていくかをぜひ読んでほしい。
パロディだと思っていると足元をすくわれる。
読み終わった今では黒部雄太郎を応援したくなっている。


こーしゃんさん ★★★★

一人のチャランポランな人間の挫折→成長物語でもあり、政治や国会についての基礎的なことを分かりやすく知る本でもあり、栄枯盛衰のお話でもありました。
ちょっとうまくいき過ぎの感もありましたが楽しく読めます。
中学生の娘は、時々出てくる国会や選挙についての話を社会の予習としても楽しんで読んでいたようです。
気軽にも、頭を使いながらじっくりでも読める本です。


レビューのご投稿、ありがとうございました。

新しい笑いを創造した男について『ワハハ本舗を創った男喰始を語る』
みんなのレビュー >>>『夢探偵フロイト』