ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第165回

先日、東京に行ってきた。
私はどうしても行かなければいけない場合を除き、東京へは行かないし、それもゴネにゴネて4月に行く予定だったのを5月下旬ぐらいに引き延ばす。
ついに万策尽きて行くことになったとしても、用が済んだらすぐ帰るので、東京滞在時間が飛行機に乗っている時間より短いことすらある。
今回はS(hit)学館の用であり、担当は去年末に異動してきて会うのは半年ぶり、2回目である。一度も会うことなく5年ぐらい経過している担当も多いのでかなりハイスピードで顏を合わせていると言える。
所用が終わると、担当は「この後、社に行きますか?」と不可解なことを聞いてきた。社とはおそらくS学館のことである。
行く意味がわからないので「何故?」と聞くと「行かないですよね」と答えになってない答えが返ってきて沈黙が訪れた。
もしかしたら、地方作家は上京時に出版社に寄ったりするものなのかもしれない。
確かにS学館には多くの著名作家たちがサインやイラストを描いた壁が存在し、今も新しい絵が増えていると思うので、それを見るために行く価値はある。
しかし、壁の前にある打ち合わせブースで、高確率の圧迫打ち合わせが行われているため、あまり行きたくないのである。
私が行くときたまたまそうなのか、常時高圧打ち合わせをやっているのかは不明だが、人が怒られているのを聞くと自分が怒られている気持ちになる人間は30分ぐらいで体調を崩すので、私は行くべきではないし、あのブースは壁の景観を損ねているので便所の前などに移動させた方がいいと思う。
その後、飛行機の時間の都合で担当と昼食を共にすることになったが、14時には解散となり、空港に向かう私に担当は「本当にすぐ帰るんですね」と率直な感想を述べていた。
逆にすぐ帰らないとでも思ったのか、と感じたが、他の作家はもう少し担当と交流をはかろうとするものなのかもしれない。
聞くところによると、連日編集者と長時間打ち合わせという名の雑談をしようとする作家もいるらしく、それはそれで負担らしいのだが、拒否もできないのだという。
それを聞いて、担当を消耗させるためだけに毎日打ち合わせを強要してやろうかと思ったが西部戦線みたいになるだけなので実行には移していない。
担当ガチャは同時に作家ガチャでもある。最初についた担当がろくでもなかったことで作家の人生は変わってしまうが、入社後初めてついた作家がクレイジーゴナクレイジーでも予後が悪い。
先日、別媒体の担当から「もう一人サブ担当がつく」と連絡があった。
これは私が編集者一人では手に負えない暴れ馬だからではなく、宗教勧誘がバディを組んで活動しているのと同じだ。
一見「インターフォンの前で高速反復横跳びをしているのか?」と見まごうほど、佇まいが同じ二人が立っているが、おそらくあれは先輩と後輩であり、新人指導をしているのだろう。
ちなみに、塩対応されて落ち込む新人をパイセンが慰めることで、さらにズブズブになっていくらしい。
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